物価高が家計を圧迫する中で浮上した大手ビールメーカー4社のカルテル疑惑は、事実なら消費者を裏切る行為だ。徹底調査が求められる。
公正取引委員会は、アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールが、ビール類の出荷価格を引き上げる目的でカルテルを結んだ独禁法違反(不当な取引制限)の疑いがあるとして、強制捜査を始めた。調査対象には発泡酒や第三のビールも含まれる。
不当な値上げでスーパーや飲食店、消費者が負担増を強いられていた可能性がある。身近な商品だけに、怒りを抱く人は多いだろう。
ビール類の市場規模は約1兆6千億円に上り、4社のシェアは9割を超える。公取委は、国民生活への影響が大きく、悪質性が高いと判断したようだ。通常の立ち入り検査ではなく、刑事告発を視野に入れて「犯則調査権」を用いた。同権に基づく強制捜査は2025年9月の軽油カルテル以来となる。
4社は22年10月、23年10月、25年4月に、卸売業者への販売価格をそろって引き上げた。原材料費や輸送費の高騰などを理由にしている。一方、公取委は以前から4社がほぼ同時期に価格改定を繰り返してきたことから、長年動向を注視してきた。
関係者によると、業界団体「ビール酒造組合」の会合後に4社の営業担当が「裏会」を開き、値上げの時期や幅などを調整していた。驚くべきことに、一部の社は経営陣に協議内容を報告していたという。慣行だったのか。組織的だったのか。それも今後の調査の焦点となろう。
ビールは酒税法で税率だけでなく原料なども厳格に定められ、品質は画一的になる。規制緩和もあって味や製法は多様化したが、原価で差をつけにくく、価格競争で他社より優位に立つのは難しい。少子化や健康志向の高まりでビール類市場は縮小傾向にある。厳しい経営環境の下、ライバルとの消耗戦を避けて共存共栄を図ろうとしたのではないか。
缶酎ハイやハイボールといった「RTD」と呼ばれる飲料でも4社が一斉に値上げした事例があり、公取委がビール類のカルテル疑惑との関連を調べている。
今月1日から酒税法改正により、ビール、発泡酒、第三のビールの税額が同じになった。ビールは減税で手ごろ感が増すため、各社はPRに力を入れてきたが、カルテル疑惑が商戦に水を差した。
各社が公正で自由な競争を通し、自主的に価格設定する原点に立ち戻る必要がある。「物価高だから仕方がない」という消費者心理につけ込んだ便乗値上げがほかにもないか、公取委は厳しく監視してほしい。























