人工知能(AI)の高度化で、サイバー攻撃の脅威が新たな局面に入った。個人の情報だけでなく、金融資産までもが盗まれた。国家的課題ととらえ、官民が協力して防御態勢を早急に整えるべきだ。
国内大手IT企業のGMOインターネットグループが提供する外国為替証拠金取引(FX)向けサービスが、不正アクセスを受けた。顧客の口座のパスワードなどが外部に流出し、第三者の操作による不正な取引が確認されている。
攻撃者から金銭を要求され、応じなければ顧客情報を公開するなどと脅迫されたという。GMOは要求に応じず、不正取引による損失を補償すると発表した。同社社長は、社内から「改善すべき課題」を事前に指摘されていたが、対策が遅れたとブログで釈明した。
危機感が足りなかったと批判されても仕方あるまい。企業は場合によっては躊躇(ちゅうちょ)せずシステムを一時停止し、セキュリティー強化に努めねばならない。経営陣がサイバー防御の重要性を認識することが、対策の第一歩となる。
被害は「鉄壁の防御」といわれた金融機関にも広がった。岩井コスモ証券ではインターネット取引システムの委託先がサイバー攻撃を受け、顧客の意図しない売買が成立した。システムそのものが乗っ取られるという極めて深刻な事態だ。原因分析が急がれる。被害者の口座は不正取引前の状態に戻したという。
GMOは国に「能動的サイバー防御」の適用を要請した。今月1日に施行された関連法は、政府が攻撃元のサーバーを特定し無害化する措置を可能にした。ただし対象は電気や鉄道などの基幹インフラ事業者で、GMOは該当しない。企業が適用を依頼する法的仕組みはなく、政府の判断が注目される。
ウェブサイトで広く使われているプログラミング言語「PHP」に重大な欠陥が見つかった問題では、世界中の企業や政府機関がホームページの閲覧やサービスを一時停止した。PHPの開発団体が公開した修正プログラムの適用で一部は再開したが、対応できていない国内の中小企業は多いとみられる。
政府はきのう、サイバーセキュリティーに関する関係閣僚会議を開いた。高市早苗首相は「あらゆる対処オプションを選択し、実行する」と述べ、来週中にも緊急対策パッケージを取りまとめると表明した。
AIの進化は早く、防御にもAIの活用が欠かせない。ただ高度なサイバー攻撃を企業単独で防ぐのは難しい。政府は関連情報の収集や国民への啓発、企業の対策支援にスピード感を持って取り組む必要がある。























