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 犯罪被害者の心身の痛みに深く共感し被害回復を図る。検察に求められる当然の姿勢がないがしろにされてはいないか。

 大阪地検トップだった2018年9月、酒に酔った部下の女性検事に性的暴行を加えたとして準強制性交罪に問われた元検事正の北川健太郎被告が、第2回公判で無罪主張に転じた。弁護側は性行為を認めた上で「同意があると理解していた」と釈明し、「女性は被告に特別な感情を抱いていた」とも述べた。

 2年前に開かれた初公判では起訴内容を認め、「女性に好意があった」などと動機面にも触れていた。「否認すれば関係者や検察に迷惑がかかると思った」と釈明したが、主張を一転させたことで女性をさらに傷つけたことは残念でならない。

 検察側は、飲酒に加え、地検職員を指揮・監督する検事正の影響力ゆえ、北川被告に抵抗するのは著しく困難だったとする。被害を受けた女性が家族との絆についてつづった陳述書を代読し「性行為の同意はあり得ない」と強調した。公判後に会見した女性は「絶望感がこみ上げた」と憤った。

 見過ごせないのは、女性が検察内で受けた二次被害を放置されたと訴えていることだ。

 北川被告から「表沙汰にすれば地検が機能しなくなる」と言われ被害申告を思いとどまった女性は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し休職した。24年4月に女性が告訴すると、職場で「虚偽申告だ」との中傷が広がったという。環境改善を訴えたが対応はにぶく、今年8月に退職した。

 仕事にやりがいを感じていた被害女性を守れなかった検察組織の責任は極めて重い。

 女性は同様の被害者を出さないために、検察内のハラスメントを第三者委員会に調査させるよう山下貴司法相に求めた。訴えを受け、法務・検察当局は全ての職員を対象にアンケートを進めている。山下法相は調査結果を公表する方針を示したが、第三者委などの関与については慎重な姿勢を崩していない。

 自浄作用の働かない体質は、冤罪(えんざい)事件が相次いでいる要因でもある。外部の視点を取り入れて調査を尽くし、意識改革を徹底しなければならない。