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 イスラエル国会の総選挙(定数120)が投開票され、ネタニヤフ首相が率いる右派リクードは第1党を維持したものの、議席を32から27に減らした。極右政党を含む与党陣営全体を合わせても議席は7減の53にとどまり、過半数を割り込んだ。

 ネタニヤフ氏は2023年10月、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスによる越境攻撃を防げず、約1200人が犠牲になった政治責任を問われていた。その後、ガザやレバノン、長年敵対するイランへ軍事作戦を拡大し、求心力回復を図ったが、民意は危機をあおる手法に「不信任」を突きつけたと言える。

 ネタニヤフ氏の強硬路線は中東全体の緊張を高め、世界経済にも深刻な影響を与えている。総選挙を沈静化の転機とせねばならない。

 ユダヤ系の反首相陣営では、アイゼンコット元軍参謀総長が率いる中道新党ヤシャルが21議席を得たが、野党全体では48議席にとどまった。一方、アラブ系の2政党は躍進し、議席を10から19へほぼ倍増させた。

 ユダヤ系の与野党はそれぞれ連立政権に向け多数派工作を目指すが、難航が予想される。4日に投票結果が確定した後、ヘルツォグ大統領が「政権発足の可能性が最も高い」と判断した議員に組閣を指示する予定だが、交渉が不調に終わり再選挙になる可能性も高まっている。その間、信任を得ていない現政権が暫定統治を続けることになる。

 支持回復を目指すネタニヤフ氏は盟友のトランプ米大統領を説得し、米中間選挙後のイラン再攻撃を計画しているとされる。自身の政治的延命のために、中東情勢をさらに緊迫化させる事態は断じて許されない。

 政権交代の鍵を握るのはアラブ系の政党だ。ネタニヤフ氏の露骨な差別政策に対する危機感から、選挙への関心が低かったアラブ系市民の投票率が急上昇し、議席を押し上げた。政党トップは反首相陣営に協力する意向を示している。

 一方、反首相を掲げるユダヤ系政党もハマスの越境攻撃を受け、イスラム社会への嫌悪感を強めているとされ、アラブ系政党との連立合意の道は険しい。だが、中東情勢の真の安定化には、イスラエルやパレスチナにおけるアラブ系住民とユダヤ人との共存が不可欠だ。閣外協力の形でも連携を目指してもらいたい。

 現政権は、ヨルダン川西岸への違法な入植やガザへの執拗(しつよう)な攻撃など過酷なパレスチナ政策を巡って国際社会の強い批判を浴びてきた。ネタニヤフ氏にはガザでの戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所から逮捕状が出ている。連立の枠組みにかかわらず、孤立を解消し、国際協調路線へ回帰することが重要だ。