エッセー・評論

猫の毛まみれのキーボード

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一定の礼節(撮影・吉田敦史)

一定の礼節(撮影・吉田敦史)

 この前、2年間住んでいた部屋の更新があった。それに際して、修理が必要な箇所がいくつかあり、不動産屋が依頼した大工さんが見積もりに来ることになった。午前中、家で仕事をしているとその大工さんから電話がかかってきた。出ると、彼はこう言った。「あのね、反対側まで回ると面倒だから、下まで来て扉を開けてくれない?」。私の住む建物は入り口が二つあり、正面は常に開いているが、裏側の扉は住人の鍵がないと開けることができない。彼はそれを知っていても、裏側に来た。仕事を中断して扉を開けに下りていくのはいいとしても、この人はなぜため口なのだろうとまず思った。

 扉を開けると、下で待っていた男性は「いやー、ごめんね」と言いながら階段を上り、部屋に入ると本棚を見て、「わー、本がいっぱいだね、すごいね、学生さん?」と声を上げた。私が仕事で使うのでと返すと、「えー、そうなの、えらいんだねぇ」とねばっこい調子で言う。私が破損した場所にした応急処置を見ては、「へー、上手だねえ、今の仕事やめて、おじさんの弟子になる?」と言い、大工なのにメジャーを持って来ず、「メジャー持ってない?」。そして、下見が終わった後も、「ねえ、本棚見てもいい? おじさんも昔は本が好きでさあ」と居残ろうとする。この人の“おじさん精神”に、私はほとほと疲れてしまった。

2017/5/6

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