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第5部 三歩進んで、二歩下がり

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臓器提供に向けた家族の話し合いを振り返る福岡紗妃さん=大阪市内
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臓器提供に向けた家族の話し合いを振り返る福岡紗妃さん=大阪市内

臓器提供に向けた家族の話し合いを振り返る福岡紗妃さん=大阪市内

臓器提供に向けた家族の話し合いを振り返る福岡紗妃さん=大阪市内

 3年ぶりに会った父親は人工呼吸器がつけられていた。目を閉じたまま、呼び掛けても反応がない。

 「私は人前で泣きたくない性格。でも父の姿を見ると、さすがに涙が出ました」。大阪市の福岡紗妃(さき)さん(29)の言葉に、私たちはじっと耳を傾けている。

 福岡さんの父親は職場で倒れ、兵庫県内の病院へ救急搬送された。脳出血だった。

 「私は3年前に父とけんかをして、家を出てしまったんです。それからは母と暮らしていました」。父親は福岡さんの2歳上の兄と、神戸で生活していた。

 その兄から連絡があり、福岡さんは父親が倒れたことを知らされる。「臓器提供の話を一緒に聞いてほしい」。兄は病院で、父親が脳死に近い状態で回復の見込みがないこと、臓器提供という選択があることを告げられていた。

     ◇     ◇

 脳死下の移植は心臓が動いている状態で死が宣告され、そのまま臓器が摘出される。父親は臓器提供の意思表示カードを持っておらず、家族に判断が委ねられた。

 「正直、体は傷つけたくないけど…」。母親が福岡さんと兄に語り掛ける。「移植を取り上げたテレビ番組を一緒に見たとき、『最後ぐらいは誰かのためになりたい』って話してた」。父親のその言葉を尊重し、母親は「提供しようと思う」と言った。

 福岡さんも賛同した。「つらいけれど、どこかで役立ってほしいとも思って。あまり悩まなかったな。なんでかなあ」と振り返る。

 兄は臓器提供を避けたがっているようだった。ただ表立っては反対せず、母親や妹に「自分らがしたいならいいんちゃう」と繰り返していた。

 福岡さんは「父は以前から体調が悪かったみたいです。兄には『病院に行かせておけば』という後悔があったのかもしれないですね」と気持ちを推し量る。

     ◇     ◇

 家族で2時間ほど話し合い、臓器提供を決めた。兄と母親が名前を書き入れた承諾書が、福岡さんに回ってくる。「ほんとに、ほんとにしていいねんな」。2人に問い掛けると、兄が「するって言ってるやろ」と返した。

 「署名はあえて最後にさせてもらいました。もやもやした気持ちが嫌で、全員が納得せなあかんと思ったんです」

 翌朝、脳死状態かどうかを判定する検査が始まった。

2020/2/11

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