コトバのチカラ
2017年2月18日に行われたフィギュアスケートの四大陸選手権(韓国・江陵)で、女子の三原舞依=神戸ポートアイランドクラブ、県芦屋高2年(いずれも当時)=が初出場優勝を果たした。約1年2カ月前は病院のベッドの上にいたが、一気に頂点へ駆け上がったシンデレラガールは「信じられない。夢のよう」とはにかんだ。
ショートプログラム(SP)4位から逆転を狙ったフリーで、身長154センチの新鋭は七つのジャンプを全て決め、自己ベストを大幅に更新。表彰台の一番高い場所に立つと観客から「おめでとう」と言葉をかけられ、地元韓国の英雄で2010年バンクーバー五輪金メダルのキム・ヨナ(キムヨナ)さんから花束を受け取った。
小学2年時に競技を始め、神戸市立飛松中時代には全国中学校大会で優勝。将来を期待されたが、高校1年時の2015年12月に初出場したジュニアグランプリ(GP)ファイナルで両膝の痛みが悪化した。帰国後、全身の関節が痛む病気「若年性特発性関節炎」と診断された。
リウマチに似た症状だが、原因は不明。入院は2週間に及び、車いす生活が続いた。「(競技復帰は)無理なのかな…」。不安がよぎった。
退院後も投薬治療を続け、徐々に痛みは和らいだが、氷上に戻れたのは4カ月後。膝に負担のかかるジャンプ練習はしばらくできなかった。今も月1回、検査も含めて丸1日かかる点滴治療などで病と付き合う。寒くなるとこわばりや痛みも出る。
それでも、弱音は吐かない。「『病気だからできない』というのが一番大嫌いなせりふ。病気になったからこそ強くなれたこともある」。ジャンプ練習を控えていた時期はスケーティングを徹底的に強化した。それは、ジャンプの安定感やしなやかさが強みだった三原に新たな武器を加えた。
15年の全日本選手権は病室の小さなテレビで見ていた。同じリンクで競い合う坂本花織=神戸野田高1年(当時)=らジュニア組の演技に元気をもらった。大好きなスケートができる喜びを改めて感じた三原は、復帰1年目で大きく飛躍した。
翌シーズンのGPシリーズで表彰台に立ち、16年の全日本選手権では堂々の3位。初めて世界選手権への切符をつかんだ。苦難を乗り越えた17歳が、平昌五輪のプレ大会で花を開かせた。(山本哲志)
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