コトバのチカラ
■「オリンピックに慣れることなんてない。慣れないと知っていることが強みなのかもしれない」
昭和生まれのアスリートが、日本選手で最初の東京五輪切符を手にした。
宝塚市出身で水泳・飛び込み男子の寺内健(39)=ミキハウス=は、自身6度目となる2021年五輪期間中に41歳を迎える。「まさかこの年まで競技を続けるとは」。同年代で一線級の飛び込み選手は世界的にも皆無と言っていい状況で、本人も感慨深げだ。
19年2月に肩を痛め、板を飛ぶ練習を本格的に再開したのは同6月。五輪代表入りを決めた今回世界選手権のわずか1カ月前だった。逆風が吹いたかに見えたが、「屁(へ)とも思わない。若い選手なら焦るかもしれないけど」と動揺した様子はない。言葉通り、長年の経験から培った高い調整能力を発揮した。
肉体やパフォーマンスは「この5、6年、あまり変わっていない」と衰え知らず。技の豪快さと美しさを保ち続ける。けがのリスクを伴うほどの激しいトレーニングで、自分を追い込んできた鍛錬のたまものだ。
JSS宝塚で競泳を習っていた宝塚市立西山小5年の時。飛び板で遊ぶ姿にセンスを見いだした中国出身の馬淵崇英コーチに誘われ、飛び込みに転向。今に至る二人三脚の歴史が始まった。
1日10時間以上の特訓に耐え、高校1年だった1996年、アトランタで五輪初出場。次のシドニー五輪では、男子高飛び込みの日本選手として過去最高の5位に上り詰めた。今では海外の関係者らからも「ケン!」と声援が飛ぶ。
93年12月の神戸新聞記事で、宝塚市立光ガ丘中1年だった寺内は夢を口にしていた。「オリンピックでメダルを取りたい」
それから四半世紀。ひのき舞台にはすでに5度立った。「オリンピックに慣れることなんてない。慣れないと知っていることが強みなのかもしれない」と笑みを見せるのは、不惑の余裕か。
「6回目の五輪でメダルを取り、レジェンドと言ってもらえるような結果を求めたい」。中学時代と変わらぬまなざしで、日本飛び込み界初のメダルを狙う。(藤村有希子)
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