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ソフトボール・乾絵美「上野さんの球は、砲丸のような衝撃」

2020/06/19 16:15

 東京五輪で3大会ぶりに競技復活するソフトボール。国内屈指の捕手だった乾絵美さん(36)=加古川市出身=は代表入りしながら出場機会のなかった2004年アテネ大会を経て、08年北京大会では1次リーグ5試合に参戦。日本初の金メダルに貢献した。

 -北京大会では今でも日本のエースを張る上野由岐子投手の球を受けた。

 「一つ年上の上野さんとは所属チームも一緒で。03年に初めて上野さんの球を受けた時には、グラブをかすりもせず後ろに抜けていった。速すぎて対応できなかった。とんでもない人だと。捕れるようになったら、今度は砲丸のような衝撃。手が痛くて痛くて。グラブの中では革製の手袋を着けていたけど、手が腫れて手袋が脱げなかった」

 -大切な初戦でマスクをかぶり、豪州に競り勝った。

 「(二回に)ホームランを浴びて同点に追い付かれた。球がスタンドに入っていく場面は今でも頭に残っている。オーストラリアって、ほかの試合の時とはまるで別のチームのようで、五輪になるとめちゃめちゃ強い。そんな中でも上野さんのバッターを冷静に見る目や、ボールをコントロールする力はすごかった」

 -優勝の瞬間、上野投手を肩に担いだ姿が印象的。

 「勝った時にはマスコミのカメラが上野さんに向くだろうから、一緒に写ろうと。実はウエートトレーニングではそれまで、上野さんの体重分の重りを挙げたことがなくて。だから、肩車するのを見たチームのトレーナーに『今まで練習で手を抜いてたのか』と怒られた」

 「喜びの後は感謝の思いが湧き上がって。要望通りのグラブを作ってくれる人、食事を用意してくれる人…どれだけ多くの人が身を削って協力してくれたか。感謝するってこういうことか、と分かった」(聞き手・藤村有希子)

▽いぬい・えみ 1983年10月26日、加古川市生まれ。加古川中部中-常盤高出。東海学園大中退後の2003年、日立&ルネサス高崎(現ビックカメラ高崎)に加入し、日本リーグ制覇。09年に現役引退。20年1月、プロ野球オリックスのスカウトに就任。

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