コトバのチカラ
結衣ちゃんの夢は、私たちの夢。東京パラリンピックの車いすテニス女子で金メダルを目指す上地結衣(27)=三井住友銀行、明石市出身=には、競技を始めて間もないころからの支援者たちがいる。コロナ禍のため、目の前で声援を送ることはかなわない。「顔を合わせられなくても、応援はずっと届いている」。絆を胸に、上地は戦う。
上地は生まれつきの潜在性二分脊椎症で、足などにまひがある。11歳で車いすテニスを始め、めきめきと力を伸ばした。
障害者スポーツは器具なども含めてお金がかかる。“スポンサー第1号”となったのは、母芳美さん(55)の当時の勤務先。ガス事業会社「シィメス」(神戸市西区)の浅井哲也社長(47)は「中学1年のころに初めて会ったとき、『将来パラリンピックに出てみたい』と言っていた。こんな小さい子が夢を持って生きている。彼女の夢を一緒に追いかけていけたら」。上地が出場する大会パンフレットに広告を出したのが始まりだった。
地元を中心に支援の輪は広がり、2012年のロンドン大会前には「応援する会」を結成。世界ランキングを上げるために必要な海外遠征費を工面しようと、夏祭りや駅前で募金活動もした。
前回リオデジャネイロ大会は銅メダル。四大大会でシングルス優勝8度のトップ選手へと羽ばたいた上地には、大企業のスポンサーもついた。「手の届かないような存在」(浅井社長)になっても縁は続く。今も活躍するたび、報告に来てくれるという。本社の一室には、上地から贈られた全米オープンの優勝トロフィーが輝く。
社員旅行を兼ねるはずだった東京大会は無観客に。代わりに社員たちのビデオメッセージを送った。24日の開会式が始まったころ、上地の伝言が届いた。
たくさんの人たちと出会えて、今も応援してもらえていることに感謝の気持ちでいっぱいです。少しでもこの気持ちを伝えたくて、私から逆サプライズです! 開会式、ぜひ最後まで見ていただけたらうれしいです!
「行進にも見当たらないし心配していた」と浅井社長。クライマックスに姿を現した上地は、家族にも内緒にしていた聖火台への最終点灯者だった。
1日のダブルス準決勝は敗れ、3位決定戦に回った。2日には初の決勝進出を懸けてシングルス準決勝に挑む。「いい報告がしたい」と上地。地元でみんなが待っている。(山本哲志)
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