コトバのチカラ
▽女子シングルス決勝
勝者を笑顔でたたえた後、上地の涙は止まらなくなった。車いすテニス女子シングルス決勝。時間がたつにつれ、地元で応援する人たちの顔が浮かんだ。「(金メダルを)見せてあげられなくてごめんね」。何度も、何度も、込み上げた。
勝ちたい理由は、いくつもあった。直前の3位決定戦。ダブルスのグランドスラム(四大大会全制覇)も一緒に達成した長年の相棒ホワイリー(英国)が「銅」に輝いた。「彼女の位置は変えられないけど、私が隣に行くことはできる」。出産を経て最後のパラリンピックに臨んだ友と、表彰式で隣に並びたかった。
宿敵デフロートに真っ向から打ち合いを挑んだ。「相手を落ち着かせたくない」。磨き上げたバックのトップスピンを軸に、スライスでも仕掛けた。だが、世界女王は隙を見せない。強烈なバックハンドで24本のウィナー(決定打)を浴びた。
それでも、最後まで粘った。第2セット終盤に計6度のマッチポイントをしのぐ。6-5とリードし「悔いが残るとすれば、そこで取り切りたかった」。タイブレークで力尽きた。1時間45分の熱闘。表彰式を終えると、日付は変わっていた。
「いいプレーだったよ」。年下のライバルにねぎらわれ、悔しさが湧いた。「そう思えるなら、まだもう少しやっていけるのかな」。11歳で始めた車いすテニス。日本女子初の銀メダルに輝いた27歳の旅は続く。(山本哲志)
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