
大学入学共通テストのみならず、高校入試でも、出題傾向がかつてのような暗記中心の知識偏重から、「読解力」や「社会問題への関心」を問う出題が、近年多く見られるようになりました。また問題量も増え、情報の処理能力が問われるようになっています。今回は、兵庫県の公立高校入試の傾向もふまえ、これからの時代に求められる力と、その力をつけるための日常的な取り組み方を考えていきたいと思います。
◆一般入試問題は知識の暗記から「情報の読み取り」へ

兵庫県の公立高校一般学力検査の出題は、語句の記述問題が数題、あとは符号選択問題が大半を占め、いわゆる「何十字で書きなさい。」という記述問題や、他府県の出題で多く見られる条件作文がありません。
しかしながら「記述がないから簡単だ」と考えるのは大きな誤解です。記述がなくても、受験生の「読解力」や「思考力」を試す良問が、毎年出題されています。
顕著なのが、国語の「複数資料の読み取り」です。アンケート結果や対話文、発表用スライドなど、性質の異なる複数の資料を組み合わせて出題され、資料から必要な情報を素早く取捨選択して整理しなければなりません。
また、社会科でも、単純な一問一答の出題はなく、地理・歴史・公民それぞれで豊富なグラフや統計データ、資料を読み解く力が必須となっています。兵庫県の地場産業や特産品といったローカルな話題から、地球温暖化や少子高齢化、SDGs(持続可能な開発目標)といったグローバルな課題までがデータとともに提示され、そこから何が読み取れるかが多面的、多角的に出題されます。
◆2月入試は「社会への関心」がポイントに

一方、2月の推薦入試や特色選抜は、「社会への関心」に関わる問題が小論文や作文で出題され、地域の防災・減災やAI(人工知能)の普及といった、リアルな社会問題をテーマにした出題が見られます。
また、複数の複雑な資料から課題を読み解いた上で、自らの意見を論理的に文章で表現しなければならない出題もあります。
つまり、一般入試では「多様な情報を整理し、的確に読み解く力」、推薦入試では「それをもとに自らの意見を論理的に表現する力」が求められると言ってよいかもしれません。どちらの入試であっても、日頃から「社会の出来事」にどれだけ関心を持ち、背景を理解しているかが、入試における大きなアドバンテージを持つカギと言えるでしょう。
◆「生きた教材」として引用される新聞記事
国語の問題の素材として新聞のコラムや社説が採用されることは、大学入試も含め、全国的に珍しくありません。
さらに社会科の資料として実際のニュース記事が引用されたり、推薦入試の小論文のテーマとして、現代の社会問題を報じる記事がそのまま提示されたりするケースが増えています。
2026年度は兵庫県内のある公立高校特色選抜の入試問題に神戸新聞の記事が引用されていました。記事では、空き家を活用してカフェや雑貨店をオープンさせる地元の地域活性化の取り組みが紹介されており、関連するグラフや統計と合わせて出題されていました。
また、ある私立高校でも、国語の問題で時事コラムを引用し、記事中の漢字やことわざについて問われていました。
記事が授業や試験に採用されるのは、新聞が教科書で学ぶ知識を現実の社会に結びつける絶好の素材だからといえるでしょう。
◆日常の中で社会問題への関心をどう養うか

では、子どもたちの社会問題への関心を、日々の生活の中でどのように養っていけばよいのでしょうか。
新聞が身近にある場合、効果的なのは、リビングに紙の新聞を置いておくことです。ネットニュースはアルゴリズムによって興味のある情報に偏りがちですが、紙面はめくるだけで、意図しない多様な情報が「偶然」目に飛び込んできます。
新聞を読む習慣がないお子様も、まずは見出しや写真を眺めるだけでも、社会の動きを捉えるきっかけになります。
実践的で具体的に取り組みやすい方法としては神戸新聞の『NIEワークシート』を活用してみるといいかもしれません。実際に掲載された新聞記事を題材に、出題される問題に答える形式のワークシートです。
記事も中学生に読みやすく、興味を引く題材が選ばれ、新聞を読むことに抵抗を感じるお子様にも取り組みやすいツールです。
ここで、何より重要なのは、家庭内での「対話」です。ニュースを前に「どう思う?」と問いかけ、互いの考えを言葉にし合うことです。大人が求めるような「正しい答え」を用意する必要は全くありません。多様な意見に触れて自分の考えを整理するプロセスが、推薦入試の面接や小論文、一般入試に必要な視野の広さを育みます。
今回は高校受験対策として、「読解力」や「社会問題への関心」についてお話をしましたが、これらは、受験が終われば不要になるものではありません。実社会における情報処理能力や、物事を論理的に考える力、多角的に見る力、新しい発想を生み出す力など、将来にもつながっていくことでしょう。受験時期のみならず、家族で対話の習慣を続けてみてください。
<執筆者>株式会社創造学園第1課 課長代理・田邊 陽子
指導歴26年。教室現場で13年、教務部で13年にわたり、国語を専門に創造学園の指導および教材開発の責任者を務める。熟読・多読・速読を学年に応じて身につける学習法を確立し、全教科の基礎となる「読み解く力・考える力=国語力」を育成。カリキュラムと教材開発を通じて、創造学園生の学力向上と志望校合格を支えている。教科指導面では、学研塾講師検定SS級(最高位)を取得し、塾内講師研修でも優秀賞を受賞。検定官としての経験も持つ。現在はオンライン授業を中心に、中学部最難関講座の国語を担当し、生徒から厚い信頼と高い支持を得ている。
























