大河ドラマ「どうする家康」で、柴田勝家役を演じている吉原光夫(よしはら・みつお)。信長の筆頭重臣として登場しているのだが、家康目線のドラマのため登場シーンは少ない。ただし、このあとはお市の方との絡みで登場回数が増えそうだ。
さて、勝家は一般的には「武力一筋」「名門として威張っている」というイメージが強いが、「どうする家康」では、ブラック体質の強い織田家中の中では気配りのできるまっとうな武将として描かれている。この柴田勝家を演じているのが劇団四季出身の俳優、吉原光夫である。
「吉原」のように「吉」のつく名字には大きく2つのルーツがある。
1つは名字に願いを込めていい言葉をあてたもの。昔は言葉を大事にした。とくに名字は日常生活に密着しており、子々孫々まで使い続けるということから、悪い意味の言葉は使わず、漢字もいい意味の漢字をあてることが多かった。
自分の所有する田んぼがたくさんコメが実る「いい田んぼ」になるようにという願いを込めて、ただの「田」でなく「吉田」といい、実りをもたらす川は「吉川」といった。「福」「幸」などがつく名字と同じ意味である。
もう1つルーツが、植物の「アシ」に因むものだ。アシは湿地や川岸など水辺に生えるイネ科の多年草で、北海道から沖縄まで全国にひろく分布し、2~3mにも成長して大群落をつくる。アシの茎は固くて中が空洞になっており、古くから葦簀(よしず)など日常生活によく利用された。
しかし、「アシ」という言葉が「悪(あ)し」に通じるため、関西を中心に「ヨシ=良し」と言い換えることが多かった。ここから、アシの茂る川をヨシ川といい、これに「吉川」という漢字をあてた。「吉原」はヨシ(アシ)の茂る原のことであろう。
いずれにしても、「吉原」のルーツは全国各地にあった。従って、「吉原」という名字は現在でも沖縄以外にまんべんなく分布している。
なお、「吉原」には「よしはら」「よしわら」の2つの読み方がある。
秋田県では「よしわら」が多い他、関東から静岡県にかけての地域でも1~2割が「よしわら」と読むが、その他の地域ではほぼ「よしはら」。全国を合計しても9割以上が「よしはら」である。
◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。