2024年1月1日に発生した能登半島地震から1年半が経った今も、石川県内では「猫の多頭現場」に関する相談が後を絶ちません。
そんな現状をSNSで発信しているのが、石川県でTNR(※)活動を中心に取り組む動物保護団体「ののいち にゃんこのおうち」(@nyankonoouti)。代表の中野さんは、6月に入ってからも能登町や志賀町などで、TNRや子猫の保護依頼が相次いでいると語ります。
※TNR:Trap(捕獲)→Neuter(不妊・去勢手術)→Return(元の場所へ戻す)
■空き家の解体、仮設住宅の“引っ越し”…行き場を失う猫たち
「震災で取り残された猫たちが今もたくさんいます。最近は、半壊した空き家の解体工事が進み、そこに住み着いていた猫の行き場がなくなっているんです。また、仮設住宅からの引っ越しに伴い、そこで餌をもらっていた猫たちの“居場所”も失われつつあります」と語る中野さん。しかし、すべての猫を保護するのは現実的に難しく、数の多さに対応が追いつかないのが現状です。
■急増する子猫、進まぬTNR…「去年産まれた子たちが、親になっている」
中野さんによれば、現在猫が増えている背景には、昨年手術が間に合わなかった子猫たちが成猫となり、繁殖を繰り返している現実があります。特に、珠洲市・輪島市・能登町・穴水町などの奥能登エリアでは、もともと外飼いが多く、避妊・去勢が進んでいませんでした。高齢化や病院の少なさといった地域の課題が、猫の“命の連鎖”を止められない一因にもなっています。
■マイクロチップ「1匹も入っていない」──“教訓が活かされていない”現実
「震災を経験して、あらためてマイクロチップの重要性を感じました」と中野さん。東日本大震災でも叫ばれた“迷子対策”ですが、今回の能登では何百匹の猫を保護・TNRしても、1匹たりともマイクロチップが入っていなかったといいます。
「誰の猫なのか分からない。連絡先がない。結びつける手段がない。命を守るために、啓発の必要性を痛感しました」
■シェルターなし、ボランティア頼みの支援現場
中野さんの団体はシェルターを持たず、保護した猫は県内外のボランティアが一時預かりし、里親が見つかるまで世話をしています。
「本当はすべて室内飼いが理想。でも、奥能登では外飼いや放し飼いが一般的。私たちは地道に地域の方に声をかけながら、避妊手術の必要性を伝え続けています」
■今後も続く多頭現場の対応──必要なのは“関心”と“協力”
「ののいち にゃんこのおうち」は、震災直後の昨年1月半ばから活動を開始。
これまでに、
・多頭飼育現場でのレスキュー
・県外ボランティアとの連携
・避妊・去勢手術支援
・被災者への物資提供
など、多岐にわたる支援を行ってきました。
それでも、TNRが追いつかない現場はまだまだ残されています。
■猫たちに「次の居場所」を--あなたの関心が支援につながる
震災は人間だけでなく、動物たちの生活も一変させます。そしてその余波は、1年半経った今もなお続いています。現地での活動は、資金も人手も足りていません。まずは「知る」ことから。この記事を読んだあなたの関心が、小さな命を守る力になります。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)