娘さんが小学一年生で描いた「黒いイルカ」/生藤農園さん(@ikefujinouen_c.lover)提供
娘さんが小学一年生で描いた「黒いイルカ」/生藤農園さん(@ikefujinouen_c.lover)提供

「もっと明るい色で描いたら?」絵画教室でそう声をかけた先生に対し、小学1年生だった少女は首を横に振りました。「これがいい」と譲らなかったのは、黒一色で描いたイルカの絵。周囲の子どもたちが緑やピンク、水色のカラフルなイルカを描く中、少女が貫いた“表現”が、10年後、思いがけず多くの共感を集めています。

話題になっているのは、福井県でメロン農家を営む「生藤農園」さん(@ikefujinouen_c.lover)がThreadsに投稿した1枚の絵。投稿されたのは、現在15歳の娘さんが小学1年生のころ、体験で参加した絵画教室で描いた「黒いイルカ」の作品です。

「絵画とは言っても、パステルを使ったお教室で、ステンシルという型のある技法で描きました。(輪郭は型がありましたが)色や光の差し方、イルカの頭数や位置は娘のオリジナルでした」(生藤農園さん)

制作中、先生から「もっと明るい色にしてみたら?」と声をかけられた娘さん。掲示されていた他の子どもの作品には、鮮やかな色のイルカが並んでいたといいます。「暗い色より、明るい色のほうがいいよ」と助言されたうえで、「描き直してみたら?」と提案もされました。

しかし娘さんは、はっきりと「描き直さなくていい。これがいい」と言い切ったそうです。母である生藤農園さんにも先生から描き直しの提案がありましたが、親子ともに断りました。

「娘が黒で描いたイルカの絵はとても美しく、親バカですが表現や目線が面白いと思いました。このまま残したいと強く感じたんです」(生藤農園さん)

帰宅して娘さんに絵の意図を尋ねると、娘さんはこう答えたといいます。

「海の底から見たらイルカは黒いでしょ?」

思いがけない娘さんの言葉に、生藤農園さんは「確かに!」と納得したと言います。

「海の底から人を見ると暗く見えるので、イルカもそうだと考えたのかなと。水族館で横からしか見たことがないのに、そんな発想が出てきたのがすごいなと思って」(生藤農園さん)

さらに、ほかの子どもたちが1頭のイルカを描いていたのに対し、娘さんは2頭描いたそうです。その理由も「2匹のほうが泳いでいるみたいだから」と明かしていたといいます。

それから10年。絵は今も家に飾られています。「たまたま絵を見て、当時の思い出と一緒に投稿しました」(生藤農園さん)

投稿には「このイルカ、すっごく素敵な絵だと思います!!」「小1でこれを描けることに驚きを隠せません!」といった声が多く寄せられ、5000件を超える“いいね”がつきました。

「『ラッセンより好き』というコメントが特にうれしかったです。私もそれくらいこの絵が好きなので…」(生藤農園さん)

娘さんは現在、絵とは別の道を歩み、その目標に向かって努力を重ねているといいます。

「母である私が愛するこの絵を目に留め、『好きだ』と言ってくださった皆さまに心から感謝します」(生藤農園さん)