「猫たちと一緒に暮らしてから、自己肯定感があがった」と古屋さん
「猫たちと一緒に暮らしてから、自己肯定感があがった」と古屋さん

長崎市内にある独立書店「Book with Sofa Butterfly Effect」は、急な坂道を15分ほど登った高台にある一軒家。月に数回、読書会を催し、「坂の上にある猫がいる本屋さん」と呼ばれている。店主の古屋桂子さんの飼い猫、黒猫の「よる」(6歳、オス)、マンチカンの「もぐ」(7歳、オス)、茶トラの「チーズ」(4歳、オス)の3匹はみんなフレンドリーで、訪れるお客さんを歓迎してくれる。古屋さんに猫たちとの出会いや読書への思いなどを聞いた。

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古屋さん 2019年に大浦町で開業しましたが、コロナ禍の影響もあり、20年6月にここに移転しました。長崎らしく、息を切らしながら長い坂道を登ってこないと辿りつけないので、問い合わせがあったお客さんには「坂は大変ですよ。店内は汚いですし、本当に来られるんですか?」って言っています(笑)

猫を飼ってみたいと思ったのは、オランダ坂近くにあるカフェ&バー「Carpe Diem Cafe」の看板猫「つ」と初めて会ったとき、カゴの中で人形みたいに寝ているのを見たのがきっかけです。その姿がとても愛おしくて。それで店主の勧めや紹介を通じて、3匹と出会いました。

「よる」は中華街で行われた保護猫譲渡会で出会った黒猫兄弟のうちの1匹です。「もぐ」は「先住猫との相性が悪いから」と知人から譲り受けました。「チーズ」は、(上記の)カフェ&バーの近くに突然現れた野良でした。連絡をもらって見にいくと、ちょうどごみ収集車とかが通っていて危なくて。体は痩せ細り、これはもう放っておけないと保護したんです。猫を飼うのは初めてだったので、店主夫妻から飼育のことなどアドバイスをいただき、とても助かりました。3匹とも仲良しで、お客さんが来るとみんな興味津々で寄っていきますね。

本屋を始めたのは、大人が読書を楽しむ場所があれば、その姿をみて若い世代の子たちも読書をもっと楽しんでくれるかなと思ったから。最近は「自分の境遇はこうだから」と早くから夢を諦めてしまったり、一度でも失敗すると「だめだ」と自分を責めて追い込んでしまったりする若い人たちも少なくない気がします。

うちは文学の本ばかりですが、高名な小説の中にも、主人公がダメダメだったり、取るに足らないようなエピソードがあったりして、そこが実は面白かったりします。奇妙だったり馬鹿げていたり。そんな「へんてこな本」をできるだけセレクトするようにしています(笑)。「読書は目的を持って読むもの」という人もいますけど、別に何の役に立たなくても、自分が面白そうだと思えば、気軽に何でも読めばいいと思います。

店名に入っている「Butterfly Effect(バタフライエフェクト)」は「非常に小さな出来事が最終的に予想もしなかったような大きな出来事につながる」という意味。有益かどうかもわからない読書だって、いつの間にか知らないうちに、自分の人生に大きな影響を与えることってあると思うんです。それが醍醐味なんですよね。カオスを楽しむというか。

持病があり、片付けも苦手な私ですが、体調がすぐれず寝込んでいるときなんか、心配してくれているのか、寝ている私の周りに3匹が勢揃いして集まってくるんですよ。そうやって猫たちに日々励まされていることが支えです。店を続ける私の原動力になっています。3匹はいま私のボスですね。私はこの家に住まわせてもらっている人みたいになってます(笑)

猫たちはマイペースで自由。気ままに甘えてきたと思ったら、ツンとどこかへいってしまっったり。それでも愛すべき存在なのは、ありのままに生きているから。人間も見習って、どんな境遇であっても、ありのままの自分を精一杯生きればいいんじゃないかと、猫たちや文学から学ぶ日々なんです。

【店名】「Book with Sofa Butterfly Effect」

【住所】長崎市油木町15-13

【インスタグラム】@bookwithsofabutterfly

(まいどなニュース特約・西松 宏)