9割以上の人が登山中に「スマホの電波がつながらない」経験あり ※画像はイメージです(yamasan/stock.adobe.com)
9割以上の人が登山中に「スマホの電波がつながらない」経験あり ※画像はイメージです(yamasan/stock.adobe.com)

近年、登山人口が増加傾向にありますが、年1回以上登山をする人のうち約8割を占めるのが、山歩きを気軽に楽しむ“ゆる登山勢”だといいます。KDDI株式会社(東京都港区)が実施した「ゆる登山とスマホ」に関する調査によると、9割以上の人が登山中に「スマホの電波がつながらない」経験を持ち、うち8割以上が「生死に関わるようなヒヤリハット」に遭遇していたことが明らかになりました。

調査は、ゆる登山を志向する20~60代の男女500人(各性年代50人)を対象として、2025年7月にインターネットで実施されました。

なお、本調査では、縦走や宿泊を伴わず、重装備を必要とせずに気軽に登山やハイキングを楽しむことを“ゆる登山”と定義しています。

公益財団法人日本生産性本部の「レジャー白書」によると、登山の参加人口は、新型コロナウイルス感染拡大で落ち込みを見せたものの、2022年以降は再び増加傾向になっています。

本調査を実施するに当たり、年1回以上、登山やハイキングに行く人に、その志向を尋ねたところ「気軽に自然の中で過ごすことを楽しみたい(ゆる登山勢)」が77.2%であったのに対し、「装備やルートにこだわり、目標達成や挑戦を重視する(ガチ登山勢)」は22.8%にとどまりました。

そこで、ゆる登山を志向する500人(以下、ゆる登山勢)に対して、「今年の夏にやりたい登山や山旅のイメージ」を尋ねたところ、「滝や川で自然を感じる山旅」(53.8%)、「絶景を楽しめる山旅」(45.4%)が上位となりました。

年代別で見ると、「滝や川で自然を感じる山旅」と回答した割合は40代以上で高く、また、60代は「季節の花や植物観察ができる山旅」も突出して高くなった一方で、20~30代の若い世代で見ると、「写真や動画を“映え”目的で楽しめる山旅」が他の年代と比較して高くなっており、年齢を重ねるほど自然と親しむ登山・山旅を好み、若い世代は、“映え”も楽しむ傾向が明らかになりました。

続けて、「登山やハイキングにおけるスマホの重要性」を尋ねたところ、「欠かせないほど重要である」と回答した人が21.0%にも及び、「重要である」「やや重要である」と回答した人と合わせると、89.0%が「スマホは重要」と答えました。

また、「登山やハイキング時のスマホ利用シーン」については、「常に利用している」(39.0%)が最多となったほか、「休憩時」(37.0%)、「山までの移動時」(35.6%)など、山旅のあらゆるシーンでスマホが利用されていることが明らかになりました。

登山やハイキングでスマホを利用していると回答した459人に、「どのような目的でスマホを利用していますか」と尋ねたところ、「天気・気温・雨雲情報を確認」(54.2%)や「地図アプリやルートを確認」(47.5%)、「交通機関の時刻表の確認」(35.3%)といった回答が上位に挙がりました。

これを年代別で見ると、 50~60代は全体平均の上位2項目のほか、「花や植物の名前を調べる」などで全体平均を上回った一方で、20~30代では「山ごはんレシピなどを調べる」が平均を約10ポイント上回ったほか、20代は、「自分のいる場所を家族に伝える」や「行動ログを記録・シェア」が平均を5ポイント以上上回り、30代では「SNSにリアルタイムで投稿」「写真・動画をリアルタイムで人に送る」が約10ポイント上回りました。

しかし、「登山前に通信環境を必ず調べる」と回答した人は24.8%で、「たまに調べる」と回答した人と合わせても68.2%にとどまり、「通信環境を調べない(ほとんど調べない+全く調べない)」と答えた人が31.8%に上ることがわかりました。

年代別では、20~30代が「調べる」と答えた割合が高くなったのに対して、40代以降で急激に回答割合が減少し、50代以降は4割以上が「調べない」という結果になりました。

そこで、これまで登山やハイキング中に「スマホ(の電波)がつながらなかった経験」について聞いたところ、91.1%が「ある(よくある+ときどきある+たまにある)」と回答。

また、そのうち何らかの不便や困った思いをした人は85.4%で、具体的には、「地図アプリやルートが見られなかった」(37.8%)や「天気・気温・雨雲情報が見られなかった」(30.4%)が上位に挙がりました。

さらに、「スマホが通信できず(登山やハイキングの)楽しさや満足感が下がった」と回答した人も68.9%に及んだことから、スマホの通信環境が登山やハイキングの満足度と大きく関係していることが明らかになりました。

同社は、「山間部では、携帯電話の基地局を設置できる場所が限られていたり、周辺に電気が通っていないことなどの理由から基地局の設置が難しく携帯電話が通信圏外になることがあります。また、電波は樹木にぶつかると弱まるため、周囲を高い木々や山に遮られた登山道では電波がつながりにくくなることがあります」とコメントしています。

また、「過去の登山・ハイキング中にスマホの電波がつながらなかったことでヒヤリとした経験がある」と答えた人は28.0%で、具体的な内容としては、「スマホが圏外で、現在地や地図を確認できなかった」(37.1%)が最多に。

回答者からは「登山ルートが確認できず遭難しかけた」など生死に関わるような体験や、「子どもの姿が急に見えなくなり焦った」など、数々のヒヤリとする体験が寄せられていることから同社は、「低い山だからといって、遭難リスクが少ないとは言えません。警察庁が今年6月に発表した山岳遭難の統計によると、2024年には東京都八王子市の高尾山で131人が遭難しました。この数字は、富士山の83人や3000m級の山が連なる北アルプス・穂高連峰の66人より多い数字です」と注意喚起をしています。