困っている部下のために英語での問い合わせ対応を披露©️まるいがんも/コルク
困っている部下のために英語での問い合わせ対応を披露©️まるいがんも/コルク

年頃の子どもは、親にとって扱いづらい存在になることがあります。特に父親と娘の関係は、すれ違いや誤解から「嫌われているのでは」と悩むお父さんも少なくありません。そんな親子のリアルな姿を描いたまるいがんもさんの漫画『昼間のお父さんはちょっとかっこいい?』が、X(旧Twitter)に投稿されています。

物語の舞台は、とある企業の事務所内。近隣の中学校で職場見学があるという話題で話が盛り上がっているなか、主任の柔木(やわらぎ)が部長に「娘さんは来られるんですか」と尋ねるところから始まります。柔木の質問に部長は、少し落ち込みながら「娘はこないよぉ~」「最近なんだか嫌われているみたいで…」と答えました。

その日の帰り道、柔木は本屋で部長の娘・咲子に出会い話しかけます。柔木が咲子に職場見学に来るのか聞くと、「えーやですよぉ~」「お父さんいると恥ずかしいし」と断られてしまうのでした。しかし柔木が「イケメンもいるし、ヤギもいる」と会社の魅力を語ると、咲子を職場見学に参加することを決断します。

当日、父親である部長にバレないように変装をした咲子が目にしたのは、普段の父とは違う一面でした。最初はミス続きでがっかりしたものの、海外からの電話問い合わせに対して流暢な英語で対応し、部下に「さすが!」と頼られる姿。そしてテキパキと指示を出す父の姿を無言で見つめるのでした。

そんな咲子に対し柔木は、「家では安心して休めるからこそ、だらしなく見えるのでは?」と伝えます。その言葉に咲子は父への見方を少し変え、帰宅後は夕食の手伝いをし、素直ではないながらも以前より優しく接するようになったのです。

同作について、作者のまるいがんもさんに話を聞きました。

■「家に居場所がない」と嘆くおじさんたちのリアル

ーこのエピソードは実体験や身近な人の出来事がベースに?

こちらの話は僕の体験というか、思ってたことが元になってます。今では僕もすっかりおじさんですが、若い時は会社の周りの方はだいたいいわゆるおじさんでした。

そんなおじさんたちの家での話を聞くと、「子どもはもう相手にしてくれない」「家に居場所がない」とぼやくんです。世間一般の話ですが、思春期の娘さんから「くさい」だの「洗濯物が一緒は嫌だ」なんて話はよくありますよね。

でも実際は、会社のおじさんたちって真面目にきちっと仕事して、輝いてるんですよね。一緒に働いてる僕はそんな姿を見てるけど、おじさんの家族は頑張って働いてる姿を見ることはもちろんなく、よくも悪くもリラックスしてるところしか見ていない。「そりゃそう思うかもな…」なんて思ったのが元になっています。

ー娘さんが「だらしない」と父を見てしまう部分に、親子関係のリアルさを感じました。

正直、この部分で特に意識したことはなく、僕には年頃の娘がいるわけではないので、先述した一般的によく聞いた話を描いています。そう感じていただけたならば、世間一般で言われてる話は実際そうなんだろうなぁと思います。

ー家ではダメそうに見える父が、職場では尊敬されている姿。この「二面性」を描くことで、一番伝えたかったことは何だったのでしょうか?

最初の質問と被りますが、「いやいや、家族の方は働いてるかっこいいとこを見れてないんですよ!」ってところに気づいてほしい、想像してほしいところでした。それともうひとつは、柔木さんのセリフにもあった「安心して休める大切な場所の証拠なんちゃうかな」ですね。

家でのだらしない姿=リラックスしている姿は、いわば戦士の休息場所みたいなものだと思います。もし僕がこのマンガのように思われてる子供さんと話せるなら、「キミのお父さんはすごいんだよ~」って教えてあげたい気持ちです!

(海川 まこと/漫画収集家)