2025年の夏は気象庁が統計開始以降、過去最高の暑さとなりました。猛暑は東京の家計消費支出に、どのような影響を与えたのでしょうか。株式会社帝国データバンク(東京都港区)が実施した「東京都の猛暑が家計支出に与える影響調査(2025年)」によると、平均最高気温が平年通りだった場合と比較して、東京の世帯当たりの支出額では月平均「3512円」の増加となることがわかりました。
本調査における家計消費支出への影響は、東京都内に居住している世帯による支出額への影響を対象に試算しています。なお、本試算では、食品等の値上げによる物価上昇や外出自粛などコロナ禍による影響を除いて算出しています。
気象庁によると、2025年7月の東京都の最高気温は平均33.2℃で、平年値(1991年~2020年の平均)を3.3℃上回り、8月も同33.9℃と平年より2.6℃高くなりました。(気象庁による8月22日5時発表の2週間気温予報を含む)
同社が、2025年夏の猛暑が家計消費支出に与える影響を試算した結果、平均最高気温が平年通りだった場合と比べて、東京の家計消費支出は「約772億2300万円」増加する可能性があることがわかりました。
支出が増加した項目をみると、食料は、弁当など火を使わない調理食品が増加。飲料は、「炭酸飲料」(約17億円増)や「茶飲料」(約15億円増)、「チューハイ・カクテル」(約10億円増)、「発泡酒等、ビール」(いずれも約9億円増)などが大幅に増加したほか、菓子類ではアイスクリーム・シャーベット、外食では喫茶代などが増加し、食料全体で「約192億2800万円」の増加となっています。
また、「家具・家事用品」ではエアコンなど冷房器具への支出が増え、「住居」では設備補修費が増加要因となり、「教養娯楽」は宿泊料やパック旅行費を中心に「約197億1500万円」の増加、「保健医療」は熱中症対策など医療サービスを中心に支出が増加したとみられます。
一方で、支出が減少した項目を見ると、気温上昇による漁獲量の減少で価格の上昇を受けた魚介類や生育不足が表れた生鮮野菜のほか、調理場でのガス使用の抑制によりガス代が大きく減少。また、猛暑による外出機会の減少などにより、女性用のシャツ・セーター類や和服などを含む被服への支出が減少しました。
なお、世帯当たりの支出額では、7月に「2687円」、8月に「4337円」の増加が見込まれ、今夏は猛暑により月平均「3512円」の支出増が試算されました。
東京都は、都民がエアコン等の利用を控えないよう水道料金の基本料金を無償化するなど、物価上昇が続くなかで猛暑対策を進めているものの、実質賃金の低迷が家計の購買力をそぎ、節約志向を強める要因となりました。
気温は9月以降も高めで推移する見通しであることから同社は「2025年の飲食料品の値上げは2万品目に迫ると見込まれているが、家計の購買行動の変化が今後、企業の売り上げにどのような影響を与えることになるか、注視していく必要がある」とコメントしています。