北九州市内にある「Kuroshiba Chiffon(クロシバシフォン)」は、閑静な住宅街にあり、自宅の一室を改装した隠れ家的な店。長年、試行錯誤しながら作ってきた店主・石橋悠羽さんオリジナルのシフォンケーキは「しっとりふわっとしていてとても美味しい」と評判だ。石橋さんが自宅で一緒に暮らしているのが黒柴店長の「小豆(あずき)」(オス、11歳)と、昨年(24年)、家族に加わったサバ白猫の「そら豆」(メス、10カ月)。お客さんの間では、仲良し犬猫コンビと触れ合えるとあってひそかな人気だ。2匹との出会いや仲良しぶりなどについて、石橋さんに話を聞いた。
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石橋さん 小豆と出会ったのは、18年間一緒に過ごしたトイプードルの「ブー」(オス)がなくなって3年が経ったある日のこと。商業施設のペットショップで売れ残った生後9カ月の黒柴が、ケージの中で寂しそうにしていたのを見つけたんです。
ブーを亡くし、本当に辛かったのでもう犬は飼わないと決めていたけど、もしこの子が売れなかったらどうなるんやろうと思ったら、どうしてもそのまま通り過ぎることができませんでした。遠くから見ていたら、ついに新しい飼い主は現れず。それで私が連れ帰ろうと決めました。車に乗った瞬間、おしっこをもらしたんですよ。ずっとケージの中に閉じ込められ、外の世界も知らず、怖かったのかもしれません。その姿を見て余計に愛おしくなりました。
だいぶ前に夫と離婚し、子どもはおらず、ブーがいなくなってからはずっと一人暮らし。だから小豆が我が家にやってきて、本当に嬉しかったです。散歩に行くと、小豆は初めてみる雀や蝶を見て嬉しそうに追いかけていました。当時、犬が近づいても逃げない野良猫が近所に1匹いて、小豆がすごく興味を示していたので、この子はきっと猫が好きなんだなと思ったのを覚えています。
2020年から門司港の市場で4年間、シフォンケーキの店をやっていたのですが、その間ずっと忙しくて、家に帰ってきても寝るだけの生活。小豆はとても寂しい思いをしていたと思います。昨年(24年)4月から自宅でやることにし、1日中一緒にいてあげられるようになりました。
知人から「車のボンネットの中から保護した猫がいる」との話を受けたのは昨年秋ころでした。昔から小豆は猫が好きそうだったこともあり、猫を飼うのは初めてでしたが、引き取ってもいいかなって。それでやってきたのが、当時生後1カ月だったそら豆です。
そら豆はやんちゃで、やってきた頃は小さいのに小豆に向かって「シャー」っていっていました。年齢差からすると、小豆が初老のおじいさんでそら豆は孫みたいなもの。でも小豆はそら豆の威嚇にも動じることなく、寛容に受け入れていました。そら豆が次第に成長するにつれ、「遊ぼうよ」と小豆に寄っていくように。相撲を挑むのですが、小豆は「体力的にむり!」といって取り合いません。元気よく絡まれたときは、ウザそうにしています(笑)。
そら豆が来てから、小豆はアイドルの座を奪われ、生まれて初めて嫉妬心というものを覚えたみたいです(笑)。それまではお客さんの注目を一身に浴びていたのに、みなさん、子猫のそら豆のことを可愛がるものだから、だんだん「ぼくは??」「えっ、ぼく、嫉妬せないかんの?」みたいな感じで(笑)。
でも、今は仲のいい「おじいさんと孫」になりました。そら豆は食欲旺盛で、自分の分を食べ終わったら、隣でゆっくり食べている小豆のご飯も食べるんですよ。すると、小豆は一歩ひいて、そら豆が食べ終わるのを待っているんです。ご飯を横取りされても怒らず、温かい目で見守っているのは、やはり年の功なんでしょう。
2匹はもちろん完全室内飼いですが、今年初めころ、そら豆が一度、家の外の庭に出てしまったことがありました。小豆に「そらちゃんはどこに行った?」と聞いたら、「ぼくが探しにいく」という感じで走っていくので「あんたが行ったら、びっくりして逃げるけん、中に入っとき」と。それで1時間半ほど探したら隣の家の物置の下にいて連れ帰ってきたのですが、それ以来、そら豆が庭に出ようとすると、小豆は押さえつけたり戻したりして「だめだよ」と止めてくれるようになりました。
ワンちゃんは飼い主に忠実、猫ちゃんは自由きまま。それぞれに魅力があります。そら豆は名前を呼ぶと、ニャーとかニャニャとか、そのときの気分によって違う鳴き方でこたえるのがなんともいえず可愛いです。体力の続くかぎりシフォンケーキを焼いて、お客さんに「美味しいね」って喜んでもらえるよう、これからもがんばっていきたいです。この子たちのためにも元気でいなければと思う日々なんです。
【店名】「Kuroshiba Chiffon(クロシバシフォン)」
【住所】福岡県北九州市小倉南区湯川新町2-29-4
(まいどなニュース特約・西松 宏)