保護時、猫風邪で激しく衰弱していたキナコちゃん(画像提供:ゆーちゃんさん)
保護時、猫風邪で激しく衰弱していたキナコちゃん(画像提供:ゆーちゃんさん)

「約3週間前、娘に連れられて我が家に来た子猫、目も開かずガリガリで瀕死の状態だった。病院で治療し、妻と娘が必死に看病して少しずつ回復。見違える姿に。幸せはこれからだよ! ただこんなにお転婆だとは思わなかった」

そんなコメントとともに投稿された3枚の写真。そこには、顔が汚れ、目を腫らし、衰弱した子猫が時とともに健康を取り戻す様子が写っていました。元保護猫の女の子「キナコ」ちゃんが“ずっとのおうち”に迎えられたのは、2024年7月15日。当時、生後推定2カ月、小さな体で必死に生きようとしていたのです。

■駐車場でひとりうずくまっていた子猫

ある日、飼い主のXユーザー・ゆーちゃんさん(@mikanhian)の娘さんは、勤め先の駐車場でうずくまっている小さな子猫、のちのキナコちゃんを見つけました。猫風邪をこじらせて、目を開けられないほど弱っていたといいます。

「娘は、迷わずキナコを保護しました。職場の人によると、前日にはその場所にいたそうです。我が家は長らく猫と暮らしてきたので、キナコの容態を目にしたときは『助かるだろうか…』と気が気ではなかったです」

ゆーちゃんさん家族には、猫と暮らすにあたって心に決めていることがありました。それは「一度、手を差し伸べた子は、最後までお世話をする」こと。キナコちゃんを保護したその瞬間から、彼女は家族の一員になったのです。

「キナコは発見時、すでに動けなくなっていたそうです。娘は、すぐにキナコを抱き上げて保護。消えかけていた小さな命を救った娘のことを家族みな誇りに思っています」

こうして、キナコちゃんは一命を取り留めることに。ただ、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

■予断を許さない衰弱状態から奇跡の回復

キナコちゃんの猫風邪は、とても重篤な状態でした。鼻水や目やにがひどく、はた目からもすでに虫の息であることが見て取れるほどだったといいます。

「緊急保護用ケージに入れ、体を拭いたり暖めたりして翌日動物病院へ。目薬を点眼し、風邪薬を粉状に砕いて指定の服用量を液状の高カロリー食に混ぜ、シリンジで少しずつ食べさせました」

お世話にあたったのは、主に娘さんと妻だったといいます。病院で精密検査のうえ、点滴や注射も受けながらキナコちゃんのケアに努めました。

「少しずつ症状に改善がみられるようになったときは、心からホッとしたのを覚えています。先住猫たちはどんな子が来てもウェルカムなので、入れ替わり立ち代わり、心配そうに様子を見に来ていました」

飼い主さん家族の懸命なケアを受けて、キナコちゃんは元気を取り戻しました。すると、本来のお転婆な一面が見られるように。先住猫に対して“やんのかポーズ”をとるほど、たくましく成長していったのです。

■お腹がふっくら…思わぬハプニング発生

猫風邪の治療を終えて、家族みなが安堵した次の瞬間、思わぬハプニングが起こりました。それは、キナコちゃんの妊娠。回復を待って避妊手術をするタイミングを見計らっていたところ、翌年2月に保護した「マシロ」くんとのあいだに4匹の子猫を授かったのです。

「青天の霹靂でした。マシロを保護してすぐ病院で検査を受けて去勢手術をする予定でしたが、病院の都合で1カ月後に延期となってしまったんです。そのため、マシロにはケージの中で過ごしてもらっていましたが、ある日の掃除後、ケージの鍵を閉め忘れていたようでーー夜中、マシロはケージの外に出てキナコと接触したようです。ちょうど、キナコの体調が回復し、避妊手術を予定していたときのことでした」

飼い主さん家族で暮らす猫たちは、みんな去勢・避妊の手術を済ませています。健康上、避妊手術のタイミングを待っていたキナコちゃんと、病院の都合にあわせて去勢手術を待っていたマシロくん。まさに想定外の出来事に、飼い主さん家族は動揺を隠せませんでした。

「先に、マシロが去勢手術を終えて、次はキナコ…と思っていたところ、お腹がふっくらとしていることに気づいたんです。当初は病気を疑っていましたが、まさかの妊娠と判明。長年、猫と暮らしてきましたが、このようなことは初めてです。キナコは子猫を4匹出産し、そのうち2匹は未熟児だったため虹の橋を渡りました。今、2匹の子猫はすくすくと成長し、わんぱくになっています。そして、キナコの避妊手術も終えました」

■この1年を振り返ってーー今、飼い主さんが抱く思い

あの小さくはかない存在だったキナコちゃんは、子猫の親となり、生後推定1歳4カ月(取材時)になりました。

母猫としてたくましく慈愛に満ちたキナコちゃん。優しい飼い主さん家族と、そして我が子やきょうだいとなった猫たちとともに、穏やかな日々を送っています。

キナコちゃんとの出会いから現在を振り返って、今、飼い主さんが伝えたいこととはーー

「小さな命が助かって本当に良かったです。このまま猫生が尽きるまで、みんなと仲良く暮らしてほしいと思います」

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)