日本での体験を思い出として残した、自筆のメッセージ(画像を一部トリミングしています)/Julian Biazziさん(@julianbiazzi)提供
日本での体験を思い出として残した、自筆のメッセージ(画像を一部トリミングしています)/Julian Biazziさん(@julianbiazzi)提供

「日本ではタトゥーはタブーだと言われているけど、じつは、ほくのはじめてで、たった一つのタトゥーは日本で入れた」

アルゼンチン出身のJulian Biazziさん(@julianbiazzi)が、そんな真摯な手書きのメッセージを添えてThreadsに投稿した一枚の写真が、「感動的だ」「日本愛が伝わる」と大きな注目を集めています。

日本で過ごした“人生で最高の1年”を忘れないために、人生で初めて入れたというタトゥー。そのデザインに選んだのは、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」でした。単なる記念としてではなく、北斎の「何かを極めるには一生を費やす」という生き様に強く共感したからだといいます。

投稿された写真には、心のこもった自筆のメッセージが添えられていました。

   ◇   ◇

日本ではタトゥーはタブーだと言われているけど、じつは、ほくのはじめてで、たった一つのタトゥーは日本で入れた。
日本での生活を思い出せるものがほしくて、タトゥーにしようと決めた。
えらんたのは「神奈川沖浪裏」という絵。
ストーリーもすきだし、かっこいいと思った。
赤い太陽も小さく入れて、自分だけの思い出になった。

   ◇   ◇

有名な浮世絵に「赤い太陽」を加え、自分だけの思い出として体に刻んだ思いについて、ご本人に聞きました。

■「人生で最高の1年」を思い出させてくれる存在

「特定の思い出を表しているわけではありませんが、数年後にこのタトゥーを見たときに『そういえば日本に1年間住んでいたな…本当に素晴らしい時間だったな』と思い出したいと思いました」と話すBiazziさんさん。美味しい食べ物、人との出会い、美しい景色--日本での1年間すべてが心に残っているといいます。

選んだ図柄は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」。

「初めてこの絵を見たときから好きでしたが、一番心を惹かれたのは、作者である葛飾北斎について読んだ『何かを極めるには一生を費やす』という考え方でした。その生き方に強く共感しましたし、この絵は技法や歴史、背景に描かれた富士山など、どこをとっても日本を象徴するものだと思います」と語ります。

さらにタトゥーには小さな赤い太陽を加えました。「自分なりの『個性』を加えたかったからです。昇る赤い太陽が入ることで、より一層日本らしさが増した気がしますし、タトゥー全体に温かみを与えてくれる存在になりました」といいます。

気になるのは「日本ではタトゥーはタブー」という点について。Biazziさんは「理由は理解していますが、外国人であること、そして今回のデザインの内容を考えると特に問題はないだろうと思いました。当時はすでに日本を離れる時期でもありました」と明かします。

実際に彫ってもらったのは東京在住の彫師。タトゥーに詳しい同僚の紹介で出会い、施術を依頼したそうです。「仕上がりには大満足です。思ったより痛い瞬間もありましたが、『もう少し…あと少し…!』と心の中で思いながら最後まで頑張りました」と振り返ります。

完成したタトゥーを人に見せると、「すごい!」「かわいい!」といった声が寄せられました。「外国人が日本をこれほど愛していて、それをタトゥーにすることに驚かれることもありました。お世辞なのか分からないこともありますが、どれも心からの言葉のように感じられて、とても嬉しかったです」と話します。

初めてのタトゥーに不安もあったそうですが、今は毎日眺めて満足しているといいます。「日本で過ごした人生で最高の1年を思い出させてくれる存在になっています」と笑顔で語りました。