ごくごく普通の階段に見えるが…(YOUZINさん提供)
ごくごく普通の階段に見えるが…(YOUZINさん提供)

太平洋戦争下、米軍の長距離爆撃機B29による頻繁な日本本土空襲。当初は航空機や兵器生産をおこなっている主要軍事施設を攻撃目標にした、通常爆弾攻撃だったが、昭和20年に入ると、大都市人口密集地域への焼夷弾爆撃に転じた。人口密度の高い地域への焼夷弾投下による住宅の焼尽、都市住民の殺傷を狙いとした無差別攻撃で、東京・横浜・名古屋・大阪・神戸への都市が襲われ、6月以降は中小都市にも対象が拡大した。

今、SNS上ではそんな時代に設けられたJR名古屋駅の戦争遺産が大きな注目を集めている。

「戦時中の灯火管制下で足元がわかるように設置された『蓄光タイル』。
放射性物質のラジウムが使用され、暗闇で光っていたようだが、現在では経年劣化によりラジウムの蛍光力が失われ、恐らく光らないものと思われる。」

とその模様を紹介したのはYOUZINさん(@YOUZIN9)。

ホームに上がるどこにでもあるような階段…しかし階段の両端にはたしかに古いガラス板のようなタイルがはめこまれている。この蓄光タイルは灯火管制が敷かれた戦時中、 夜間に空襲があっても安全に避難できるよう設けられたものだそうだ。

YOUZINさんにお話を聞いた。

--この畜光タイルの存在を知った際のご感想を。

YOUZIN:友人と駅を歩いている時に教えてもらったのですが、今も実際に利用されている駅でずっと残り続けていることに驚きました。どうやらラジウムの蛍光を利用しているという説もあるようですが、調べてみると、そうした記述もあれば「実は違う」という話もあったりと、謎の多い蓄光タイルでした。今回、Xで紹介するにあたっては、ラジウム系の蛍光塗料と何らかの蓄光材で光っているという説で投稿することにしました。

--投稿に大きな反響がありました。

YOUZIN:私自身、名古屋に引っ越してきた身なので、名古屋の人はみんな知っているものと思っていましたが、初耳だったという方が多くて驚きました。多くの方に知っていただけて良かったと感じています。また、未だ謎の多い光る原理について、様々な説や知識を教えていただくことができ、私も多くの学びを得ることができました。

◇ ◇

SNSユーザー達から

「名古屋駅、7・8番線ホームの階段やね。」
「ラジウムの半減期はけっこう長かった気がする、いまでも周囲を真っ暗にすれば光る気がする」
「226Raの半減期は、1601年と中程度の寿命なので蛍光体が照射により劣化したんでしょうね。蛍光体を交換したらよく光ると思います」

など数々の貴重なコメントが寄せられた今回の投稿。

電力に依存しない蓄光素材は現在も存在するが、ラジウムは製造段階における健康被害などが問題となり、トリチウムなど別の原料に置き換えられつつあるようだ。その点でもJR名古屋駅の蓄光タイルは貴重な歴史の証人と言えるかもしれない。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)