食に感謝する、菊川怜(撮影:石井隼人)
食に感謝する、菊川怜(撮影:石井隼人)

「酒造りは子育てに似ています」

日本の第一産業を応援するシリーズ最新作『種まく旅人~醪のささやき~』(10月10日公開)の舞台は、兵庫県淡路島にある老舗酒蔵。菊川怜(47)扮する農林水産省の地域調査官・神崎理恵が、日本ならではの歴史あるモノ作りの神髄に触れる。

■利き酒に挑むも

淡路島の140年もの歴史ある実際の酒蔵、千年一酒造で撮影を敢行。本物の職人からの指導を仰ぎながら、いくつかの酒造りの工程にもチャレンジした。

「日本酒を作る場所だけではなく、神崎理恵が居候する部屋や事務所も実際の場所をお借りして、リアルな場所で撮影できたことに感謝です。私自身、演じたキャラクターと同じような気持ちで視察させていただいた感覚があります」

演じた神崎理恵は日本酒マニア。菊川も大の日本酒好きだという。劇中の利き酒のシーンでは実に美味しそうに喉を鳴らしたが…。

「さすがに撮影なので利き酒シーンのお酒はお水です。コップに注がれた同じ水を飲みながら、日本酒の味を想像して演じました。撮影期間中はセリフ覚えに追われていて残念ながらお酒を飲むことはできませんでしたが、次回は観光客として訪れて味わってみたいです」

■3児の母として共感

劇中の「酒造りは子育てに似ている」というセリフにも3児の母として共感を覚えた。

「日本酒作りの過程で様々なトラブルが起きますが、それは子育ても同じ。子育ては既定路線ではいかないというか、予想外の突発的な問題に対処して解決して次に進んでいきます。沢山の職人が手間暇かけて日本酒を作るのと同じように、沢山の人たちの愛情を注ぐことで子供たちは立派に成長し自立していく。子供が自立するまでには日本酒以上の時間がかかりますが、子供が自立して巣立った時と日本酒が完成した際の感慨には共通するものがある気がします」

本作を経験するまでは日本酒=“お米を原料とした日本生まれの酒”という漠然とした認識しかなかったが、今では変わった。

「これまでは製造過程に思いを馳せることなく飲んでいましたが、その一杯の背景には神秘的な工程や精魂込めて作った職人たちの愛情と努力の結晶があるわけです。今回の撮影を通してそれらを間近に見て感じたことで、日本酒に限らず食べ物を作ってくれる人たちへの感謝の念が改めて生まれました。口にするたびに、これってどうやって生まれたのだろうか?と生産者に思いを馳せながら」

(まいどなニュース特約・石井 隼人)