「東大卒とは伝えていません」
元祖東大タレントも、今では3児の母。映画主演作『種まく旅人~醪のささやき~』(10月10日公開)が控える菊川怜(47)の育児ライフは、反省の連続だという。東大に現役合格した知性を持ってしても、育児とは摩訶不思議な超難問なのだろうか。
■マルチタスクは苦手
6歳、4歳、3歳の3児を育てるシングルマザー。仕事と育児に追われるたびに痛感するのは、人間力の重要性だという。
「母親になって“ダメだな、自分”と反省することばかりです。子供たちが言うことを聞いてくれない時、なぜダメなのかを言葉で説明して理解させるのがとても難しい。頭ごなしに叱るのではなく、冷静沈着に言い聞かせるべきだとはわかってはいるものの、年齢に応じてそれぞれ理解度も違うので…。どう言い聞かせればお互いに納得する形で終われるのか、そこがいつも難しくてついつい流してしまう事も。でもそれってダメだよなと思ったりして。3人もいて忙しくてせわしない中で、自分の本質的な人間力を試されている毎日です」
東大キャリアが子育てに活きるのは、もう少し後になりそうだ。
「子育ては複数のことを同時に行うマルチタスクなわけですが、私は一つに集中してしまうタイプでマルチタスクが大の苦手。そこに適応するように日々頑張ってトレーニングをしている感覚です。東大の経歴が活きるとしたら、子供たちに勉強を教える時くらい。でも子供たちもまだ小さいので、そこまでには至っていません。私が東大卒である事も伝えていません。大学、高校、中学という概念すらも理解していない年齢なので、それはもう少し先の話になりそうです」
■チャレンジ教育
母親の職業について、子供たちはどう受け止めているのか。
「仕事をしていることは理解していますが、それがどんな職種なのかという部分まではわかっていないと思います。ただ私の姿をテレビや電車内の広告で目にすると『これママだよね?』とは聞いてきます。私が出演したクイズ番組を見た長男からは『どうしてママは1問しか正解しなかったの?』と聞かれました。私をからかっているわけでも、責めているわけでもなく、純粋に『なぜ?』と思ったようです。その時は『ママはクイズが苦手。わかったのはあの1問だけだったの』と正直に伝えました」と笑う。
目下の楽しみは子供たちの成長と未来。日進月歩の情報化社会の5年後、10年後を見据えて、主体性を伸ばす教育を意識している。
「子供たちが大きくなった時に、今ある職業でなくなっているものもあるかもしれないと言われていますから、未来は本当に予測不可能。私の大学時代にはAIもスマホもなかったわけですから。急速に進化する時代に対応できるよう、子供たちには自分で考えて決断する力を身に付けて欲しいと思います。子供たちの気持ちを尊重して、自分で選ばせて決断させる。私から命令するのではなく、方向性的に本人がしたいというものがあるならばそちらを優先する。たとえ不向きで失敗したとしても、チャレンジさせることが大切だと思っています」
子供たちの話をする菊川の目はとても優しかった。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)