更年期障害の始まりかもしれない体調不良。※画像はイメージです(作成者:buritaro/stock.adobe.com)
更年期障害の始まりかもしれない体調不良。※画像はイメージです(作成者:buritaro/stock.adobe.com)

「最近、朝起きても体が重い」──そう感じ始めたのは52歳の事務職女性。大学生の子どもを持ち、家庭と仕事の両立を続けてきた彼女は、ある日を境に体調の変化を意識するようになりました。

通勤の満員電車でぐったりと疲れ切り、オフィスに着いた頃にはもう集中力が残っていない。パソコンに向かっても頭がぼんやりして、仕事が思うように進まない日が増えていきました。

さらに困ったのは、会議中に突然汗が噴き出してしまうこと。空調が効いているはずの会議室でも、自分だけ顔や首筋に汗が流れ落ちるのです。周囲の目が気になり、恥ずかしさで余計に落ち着かなくなる──そんな悪循環も。

家庭では気持ちに余裕が持てず、夫や子どもに強い口調で当たってしまうことも増えました。「年齢のせいなのかな」と思いつつも、病院へ行く気力が出ず、また時間も取れないので、気づけば疲れと不安を抱え込む日々に。これがいわゆる“更年期”の始まりでした。

■更年期によくある症状と生活への影響

52歳の事務職女性が感じたように、「朝起きても体が重い」「会議中に突然汗が噴き出す」といった変化は、更年期によく見られるサインの一部です。

更年期は閉経の前後10年ほどの期間を指し、多くの女性が40代後半から50代半ばに経験します。ホルモンバランスの変化によって、心と体の両方に不調があらわれやすくなるのが特徴です。

▽身体のサイン

 ・寝ても疲れが抜けない、眠りが浅い
 ・肩こりや腰痛、めまい、動悸が増える
 ・突然の発汗やのぼせ(ホットフラッシュ)

▽心のサイン

 ・気分の落ち込みや不安感
 ・集中力や意欲の低下
 ・ちょっとしたことでイライラしてしまう

こうした症状は、家庭や職場にも影響します。今回の女性が夫や子どもに強く当たってしまったように、家族との関係に溝ができることもありますし、職場では「最近元気がない」と見られることも。自分を責めてしまい、心の負担がさらに大きくなるケースも少なくありません。

■セルフケアと医療、そして「お金の備え」で乗り越える方法

体調の変化に戸惑う52歳の事務職女性も、「このまま我慢し続けるしかないのだろうか」と感じていました。しかし、更年期の不調はセルフケアや医療のサポート、そして経済的な備えによって軽くすることができます。

▽セルフケアの工夫

 ・栄養バランスの取れた食事を心がける
 ・ウォーキングやストレッチなど軽い運動を習慣化する
 ・就寝前のスマホ使用を控え、睡眠の質を上げる

小さな習慣を積み重ねることで、体と心の両面を整えやすくなります。毎日のセルフケアは、不安をやわらげる第一歩になります。

▽医療のサポート

セルフケアだけでは改善しにくい症状がある場合、専門の医療を頼ることが大切です。婦人科や更年期外来では、以下のような治療法が検討されます。

・漢方薬
「のぼせ」「冷え」「気分の落ち込み」など体質に合わせて処方されることが多く、副作用が少ない点もメリットです。

・抗不安薬・抗うつ薬
強い不安感や気分の落ち込みが続く場合に使用され、睡眠の質を改善する効果も期待できます。

・カウンセリング
更年期特有の心の不調に寄り添い、ストレスの軽減や生活習慣の見直しを支援します。

「年齢のせいだから」と一人で我慢する必要はありません。症状に合わせた治療を受けることで、体も心も軽くなり、日常生活を取り戻しやすくなります。

▽FP視点での備え

さらに見落としがちなのが「お金の備え」です。

 ・治療費や通院費をサポートするために、医療保険の内容を見直す
 ・長引く体調不良で働けなくなった場合に備え、所得保障保険を検討する
 ・50代以降でリスクが高まるがんへの備えも併せて考える

更年期は心身だけでなく家計にも影響します。52歳の女性も、体調の不調に加えて「長く働けなくなったらどうしよう」と不安を抱えていました。そこで大切なのが経済面の備えです。

まずは医療保険を見直し、入院中心の保障だけでなく外来や通院に対応できるか確認しましょう。働けなくなった場合に備えて所得補償保険を検討するのも有効です。

さらに50代以降でリスクが高まるがん保険も診断一時金型を中心に考えると安心です。加えて、3~6カ月分の生活費を現金で確保しておくと、治療費や生活の変化にも対応しやすくなります。こうした備えは「体調の不安+将来のお金の不安」という二重のストレスを和らげ、心を軽くしてくれます。

■更年期は自然な変化 52歳からの前向きな準備で安心を

更年期は誰にでも訪れる自然な体の変化です。決して「弱くなった」わけでも「怠けている」わけでもありません。大切なのは、自分を責めずに体と心を労わること。そして医療や生活習慣の工夫に加え、保険や家計の見直しで経済的な安心を整えることです。

また、家族と気持ちを共有し、支え合うことで孤独感も軽くなります。52歳からの毎日を不安ではなく「前向きな準備の時期」ととらえれば、きっと安心して過ごせるはずです。更年期は終わりではなく、次のステージへのスタートでもあるのです。

【監修】財前裕(ざいぜん・ゆたか)1級ファイナンシャル・プランニング技能士 元銀行員・Webライター。銀行員時代には、個人の資産運用や住宅ローン、保険など多岐にわたる金融商品の提案を行い、顧客のライフプランに合わせた最適なアドバイスを提供してきた経験がある。現在FP1級を取得し、Webライターとして、お金に関する記事執筆を担当している。

(まいどなニュース/もくもくライターズ)