男性の更年期障害に詳しい神戸大学大学院の千葉公嗣准教授(腎泌尿器科学)=神戸市内

男性の更年期障害に詳しい神戸大学大学院の千葉公嗣准教授(腎泌尿器科学)=神戸市内

 いらいら、だるい、眠れない-。加齢に伴って心身に不調をきたす「更年期障害」は、女性だけでなく男性にも起きることが知られてきた。どんな症状があり、どう対応すればいいのか。男性更年期に詳しく、学会による「診療の手引き」の作成委員も務めた神戸大学大学院の千葉公嗣准教授(腎泌尿器科学)に聞いた。(聞き手・山岸洋介)

 ■心の不調、体の不調、性機能の障害

 -男性の更年期障害とはどんなものですか。

 「テストステロンという男性ホルモンの減少に伴い、心身に生じるさまざまな不調のことです。体にも心にも大きな影響を与え、生活に支障をきたすケースもあります。医学的にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています」

 -どんな症状が現れるのですか。

 「身体的な症状、精神的な症状、そして性機能の障害に大別されます。症状の現れ方は人によって差があります」

男性の更年期 主な症状

 「身体的症状では、汗をかく、体がほてる、疲れやすくなる、眠れない、といったものが挙げられます。精神的な症状としては、抑うつ、いらいらや不安、注意力や集中力の衰えなどです。性機能の障害には、性欲の低下や勃起障害(ED)などがあります」

 ■加齢ととともに発症する理由

 -要注意の年代はありますか。

 「40代以上なら、どの年代でも起こる可能性があります。女性は閉経の前後5年ほどで急激に女性ホルモンの分泌が減りますが、男性は20代をピークにテストステロンが徐々に減少していきます。そのため幅広い年代で症状が現れる可能性があります」

 -なぜテストステロンが減ってくるのでしょう。

 「テストステロンを分泌する精巣の働きが、加齢やストレスで弱まるためです。若い男性であれば、精巣の働きが弱くなると脳の下垂体から『もっと働け』と指令が出るのですが、中高年になると下垂体の機能も落ちることも影響すると言われています」

 -外来に来る患者さんは、どんな訴えをすることが多いですか。

 「受診するきっかけとして目立つのは、活力や意欲がなくなって仕事に行けなくなったというものです。一方、性機能低下が一番の契機となって受診する人は日本では欧米に比べて少ないようです。性に対する考え方が海外と異なるためかもしれません」

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【千葉公嗣(ちば・こうじ)】 1973年生まれ、大阪府河内長野市出身。2001年、神戸大医学部卒。同年から神大医学部付属病院。14~15年、ベイラー医科大学生殖医療センターに研究留学。24年8月から神大大学院医学研究科腎泌尿器科学分野の准教授。専門はアンドロロジー(男性学、雄性学)で、男性不妊の治療にも詳しい。神戸市東灘区在住。