外来種アメリカザリガニに支配され、生物が少ない防除前の池/コミヤさん(@ariake538)提供
外来種アメリカザリガニに支配され、生物が少ない防除前の池/コミヤさん(@ariake538)提供

外来種アメリカザリガニに占拠され、茶色く濁っていた池が、わずか1年足らずで、水草が生い茂り多様な生き物が集う緑豊かな池へと生まれ変わりました。「根絶は不可能」とまで言われたアメリカザリガニの駆除に挑み、生態系の回復を実現した取り組みが注目を集めています。

■「池干しでは効かない」厄介な外来種に挑む

この活動を率いたのは、生物多様性の保全活動を各地で行っているYouTuberのコミヤさん。活動の記録は、YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」(@ariake538)で公開され、「不可能を可能にした」「素晴らしい活動」と大きな反響を呼んでいます。

 アメリカザリガニは、池の水を抜いて干上がらせる「池干し」では効果が上がらないことで知られています。水がなくなっても地中に潜って生き延びるため、根絶が最も難しい外来種の一つとされてきました。

「アメリカザリガニは池干しでは効果が上がらず、最も根絶が厄介な種類のひとつとされてきました。そこで、本気で防除することで克服可能であることを証明した事例を作ろうと思ったんです」(コミヤさん)

■やみくもに捕るだけでは減らない 鍵は「閾値(いきち)」

単に罠を仕掛けて捕まえるだけでは、アメリカザリガニは減りません。そこでコミヤさんたちが導入したのが「閾値(いきち)」という考え方でした。

「閾値というのは、アメリカザリガニの捕獲数が再生産を超えるかどうかの値です。捕獲する数が繁殖力を下回れば減りません」

つまり、繁殖による増加を上回るだけの個体を捕獲しなければ、個体数は減少しないということです。この閾値を超えるために、コミヤさんたちは罠の数や設置回数を増やし、徹底した捕獲を実施。1年間でこの池からおよそ2万匹のアメリカザリガニを駆除しました。この徹底した戦略的な防除が、池の回復への道を開いたのです。

■茶色く濁った“死んだ池”が、1年で緑の池に

駆除を始めてわずか1カ月で大型のザリガニが激減。翌春には、在来種であるサンインサンショウウオの幼生やオタマジャクシが確認されるようになりました。また5月ごろには水草が回復し、それを追うようにガムシやミズカマキリといった水生昆虫も増加。
茶色く濁っていた池は、1年後には豊かな緑に覆われ、多様な生き物が戻る池へと変わりました。

この成果について、コミヤさんは「アメリカザリガニを減らすと、多種多様な生物が復活します。気軽に遊べる相手でも、放してしまうことで失われる生態系は大きいです。生き物を放さないというマナーを知ってほしいですね」と語ります。

現在、コミヤさんはこの池で根絶を目指すとともに、周辺の池でも防除活動を展開しています。地域ぐるみで生態系を回復させることを目標に、次のステップへ進んでいます。

「この池に関しては根絶を目指しつつ、周辺の池でも外来種防除に取り組んでいます。周辺一帯での環境再生を行い、来年度の環境省自然共生サイトへの認定を目指しています。アメリカザリガニ防除は不可能ではなく、ため池のような環境では十分可能であることを示す事例を増やしていきたいです」