Cさん(30代主婦)は、子どもの習い事の帰りにママ友と立ち寄ったカフェでショックを受けました。ちょっと贅沢をして540円のケーキを注文したところ、あまり親しくないママ友が「一口ちょうだい!」とフォークを伸ばしてきたのです。そして断る間もなく食べられてしまい、気づけば半分近くが消えていました。
これに対して相手は悪びれる様子もなく談笑を続けており、Cさんはモヤモヤした気持ちを抱えたまま帰路につきました。ママ友付き合いは、子どもを通じた関係だからこそ距離感が微妙になりやすく、これをきっかけに疎遠になったら逆に自分が孤立してしまう可能性にCさんは頭を悩ませます。このように距離感や価値観の違いからトラブルになりそうな際、どのように対応するべきなのでしょうか。心理カウンセラーのノーム(荒木信雄)さんに、話を聞きました。
■“正直にぶつかる”より言葉の工夫で線を引くのが安心
ー金銭的・心理的に「遠慮がない相手」にどうやって上手に線を引けば良いのでしょうか
嘘も方便と言いますが、あまり誠実に向き合いすぎないことが大切です。普段から「フットワーク軽め」と思われないようにしておくことも、自分を守るためのポイントになります。
たとえば「最近忙しくて…」と自己提示しておくことで、誘いを断りやすくなり心的な安全性が高まります。もちろん「ノリが悪い」と言われるリスクもありますが、思慮分別のある人としっかり繋がっておき、フォローしてもらえる関係性を築いておかれたらいいのではないでしょうか。
ー相手に嫌な思いをさせずに、自分の不快感や違和感を伝えるための“言葉の工夫”にはどんなものがありますか
アサーション(自他尊重のコミュニケーション)を意識しましょう。
例えば「Aママもこのケーキ好きなんだね!私も楽しみにしていたからちょっとびっくりしちゃったよ」といった風に言うことで、直接「やめてよ」ではなく、「楽しみにしていた」というポジティブな表現で気持ちが伝わります。
こうすることで、角が立ちにくく、違和感を共有できます。
ーステータスや価値観の違いがある場合、そのズレにどう折り合いをつけると良いですか
“子どものために学んでいる”と捉えるのも1つの方法です。
子どもは今後、さまざまな価値観のズレに直面します。その時のための“考え方”や“言葉の処方箋”を、今の自分が先に学んでいると思うと、受け入れやすくなりますよ。自分のためだけでなく誰かのためだと考えると、不思議と力が湧いてくるものです。
ー最後にママ友との付き合いに悩む人へ、アドバイスをお願いします。
人間関係の中では、どうしても摩擦が起こります。そんな時は「嫌なことが起きた=自分へのご褒美タイム」とセットで考えると、気持ちが整理しやすくなります。
さらに、自分の中で「嫌なことをレベル1~3」に仕分けし、それに応じて「気晴らしアイテム(小=好物、中=買い物、大=エステなど)」を準備しておくと、出来事の大きさに応じてストレスを処理しやすくなりますよ。
◆ノーム(荒木 信雄)
フリースクールや企業、国立大学でカウンセリングや研修を行い、メンタルケアとキャリア形成を支援。人間関係の悩みに特化した相談サービス「isee」を運営。著書『エンプティーママと子どもを幸せにする小さな魔法』
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)