子育ては夫婦の協力があってこそ。しかし一緒に子育てを頑張るパートナーであるはずの夫が、口だけ出して一切手を貸さなかったらどうすればいいのでしょうか。漫画家のはむら芥さんが描いた「育児しない夫、変わりますか?」では、夫婦の役割分担について共感を集めています。
物語は、さとことタカシの娘、ゆいなが洗濯かごによじ登ろうとしているところから始まります。危なっかしい様子のゆいなは案の定転んで泣いてしまいますが、その様子を見ていたはずのタカシはなにもせずに見ているだけ。
さとこがタカシの「何もしなさ」に気づいたのは、ゆいなが生後1カ月の頃。夜泣きが酷く、体力的にも精神的にも追い詰められてしまったさとこは、仕事から帰ってきたタカシに育児への協力をお願いします。快く協力を約束してくれるタカシですが、そこでなぜかスマホを検索しだして的外れなアドバイスをしてきます。まさか、これがタカシの思う「協力」なのでしょうか。
しかし、さとこと同じようにタカシもまだ新米パパです。きっと育児の大変さが分かっていないだけで、育児の大変さが目に見えてわかればワンオペは不可能と気づいてくれるはずと、さとこは考えていました。
何をしたら良いか分からないのかもと思ったさとこは、今後は具体的に指示を出そうと心に決めます。そんなさとこの努力もむなしく、のらりくらりと逃げていたタカシですが、最終的には言い争いになってしまいます。タカシの言い分は、育児は育休中のさとこの仕事というもの。
さとこは、タカシに対して子育てに少しでも関わって欲しいと訴えますが、ふたりの意見はどうしても嚙み合いません。そんなタカシはこれから父親として成長することができるのでしょうか。同作について作者のはむら芥さんに話を聞きました。
■固定観念で役割が決められてしまう現状に疑問を感じた
-本作品を執筆したきっかけを教えてください。
過去に会社員として働いていた頃、育児の役割分担について考えさせられる場面が多かったことが、この作品を描く大きなきっかけになりました。
例えば、育児のために大好きな仕事を泣く泣く辞めて派遣社員になった女性が、連日の子どもの発熱で涙ながらに早退していく姿。あるいは、長い育休を取得した男性社員に対して「奥さんに任せればいいのに」と心ない言葉を投げかける同僚など……。
「育児をしたい」「働きたい」という個人の思いがあるにも関わらず、社会の風潮や性別による固定観念で役割が決められてしまう現状に、疑問と問題意識を抱くようになりました。
もちろん夫婦間で自然に役割分担ができているケースも多くあると思います。ただ、この作品では、共働きが当たり前になった今だからこそ、男性には女性の負担を知るきっかけを、女性には諦めずに夫婦で支え合いを望んで良いというメッセージ を込めて描きました。
育児に悩む方々が少しでも前に進む力を持てるきっかけになれば嬉しいです!
-作品に対するご反響の中で、気になったコメントはありましたか?
育児に奮闘されている女性からいただいた「もう変わらないと諦めていたけど、もう一度話し合ってみようと思えた」というコメントが、本当に嬉しくて心に残っています!
苦労して描いた作品だったのですが、この一言で本当に描いてよかったと強く思いました。
-こちらの漫画に実体験は入っていますか?
お恥ずかしながら入ってます!
色々と散りばめているのですが、特に初期に登場する『タカシ』や、変わらない男性として描いた『後藤』は、実際に過去のパートナーとのやり取りが元になっています。おかげでタカシを生き生きと描くことができて、今はむしろ感謝しています。
-ご自身にも家族との家事・育児のバランスに悩まれた経験はありますか?
まさに今悩みの真っ最中です。
今年の6月に出産したばかりなのですが、私たち夫婦は二人とも漫画家のため、会社員のような育児休業や手当がありません。そのためどちらかが育児に専念するというのが難しく、夫婦でワーワー言いながらその都度相談し合って、男女の区切りなく動くことを意識しながら毎日を乗り切っています。
子育て中のご夫婦は皆さん本当にすごい…と、心から尊敬しています。
(海川 まこと/漫画収集家)