せっかく作ったお弁当に文句を言ってくる! ※画像はイメージです(pain au chocolat/stock.adobe.com)
せっかく作ったお弁当に文句を言ってくる! ※画像はイメージです(pain au chocolat/stock.adobe.com)

共働き夫婦の妻・Aさん(30代)は、仕事に行く夫のために毎日お弁当を作っています。自身の仕事も忙しいため、あまり凝ったものではないですが、栄養バランスを考えられた愛情を感じるお弁当です。しかしある日、このお弁当について夫から心ないメッセージを受け取るのでした。それは「何この弁当?手抜きだろ」という一言です。

どうしてこのようなことを言われなければいけないのか分からないAさんは、その日の夜に夫に尋ねます。すると夫は「あんなの恥ずかしくて人前で食べられない」と言うのでした。この言葉に今までの努力や夫への愛情を否定されたように感じたAさんは、これからはお弁当を作るのをやめようと決意します。

Aさん夫婦はこれをきっかけに険悪になってしまうのでしょうか。そして、どうしたら関係を改善することができるのでしょうか。カップルセラピストの石田真央さんに話を聞きました。

■報復感情を持つのは自然なこと

ーAさんのように「お弁当を作らない」という報復感情を持つのは自然のことなのでしょうか

自然なことです。ですが「苦しんでほしい」あるいは「理解させたい」がためにお弁当を作らないという選択よりも、「自分を大事にする」ためにお弁当を作らない選択をしてください。

報復感情には、相手にどう反応してほしいか、どうなって欲しいかの予想・期待が含まれています。しかし、ここで大切なのはAさんが「夫を反省させるための選択」ではなく、「自分が傷つけられることを繰り返さない選択」をしたという事実です。報復感情で選択をすれば、報復が叶わなかった時(お弁当を作らなかった時に夫がノーダメージ・呑気な様子だった場合)に再び傷つけられてしまうと思います。

ー「お弁当を作らない」と宣言することで、今後の夫婦関係が良くなることは考えられますか

考えられます。少なくとも「自分が傷つけられることを繰り返さない選択」ができたわけですから、Aさんはこれ以上の夫からの文句や侮辱に耐える必要はなくなるわけです。その点では一歩前進していると言えるでしょう。ただし、ここで言う「お弁当を作らないと宣言すれば夫婦関係が良くなる」=「夫が更生すること」とは言えません。Aさんがお弁当を作らなくなっても、夫は何も困ることなく、マイペースに過ごしている可能性もあります。

ーAさんも仕事が忙しい中でお弁当を作っていることに対して、夫の理解を得るにはどうしたらいいでしょうか

思春期・反抗期のお子さんが親のお弁当にケチをつけるなんてことがありますが、身の回りのことを自分でできるようになって初めて「親のありがたみを知った」という話がよくあります。親であれば子どものためにやってあげていることは多いと思いますが、夫は大人です。必ずしも先回りして何かをやってあげる必要はありません。

気づきを促すために、まずは「夫に頼まれなくても先回りしてやってあげてしまっていること」を少しずつ減らしてみてください。当たり前にお弁当を作ってもらうのではなく、「お弁当を作ってもらえるように妻に頼む」という工程が、夫に足りない経験だと思います。ただし、大前提としてAさんがどれくらい忙しいとか、忙しくないとか関係なく、他者が自分のために良かれと思ってしてくれたことを、平気で指摘するのはよくないと思いますので「何故大切な人にそんな言い方をしてしまうのか」を理解するために、自分たち夫婦はどうあるべきかの価値観を含め、お互いの本音を紐解く必要があると思います。

◆石田真央(いしだ まお)臨床心理士・公認心理師
カップルセラピー専門機関「COBEYA」カップルセラピスト。家族療法の専門家として、夫婦・カップル間の悩み、子どもや大人の精神疾患や発達障害、問題行動など、幅広く相談を取り扱ってきた。現在は自治体の「パパママ教室」講師として、産後の夫婦のメンタルケアについても発信。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)