スーパーで商品を袋に詰めていると、ふと『お客様の声』に目を留めた経験はありませんか。二色杏さんの作品『掲示板には、きみがいた。』は、お客様の声から始まる恋物語を描いた作品です。同作はX(旧Twitter)に投稿され、大きな話題となりました。
主人公のやよいは、仕事で叱られた帰りにスーパーへ立ち寄ります。店内に貼られている『お客様の声』には、「大人になって大切にしておけばよかったもの」や「過去に戻れるなら何をする」といった問いに、ユーモラスあふれる回答が並んでいました。
そこで、やよいも思わず自分の愚痴を書き込んでみます。後日スーパーを訪れると「自分のミスを見て少しでも元気が出れば 担当T」と添えられた貼り紙を目にし、大笑いしました。
それからやよいは、スーパーに行くたびにお客様の声に書き込むようになります。Tさんのオススメは手作りプリンで、やよいは「Tさん…どんな人なんだろう」と思いを馳せながら購入しました。
ある日、やよいはレジで領収書をお願いしました。すると、店員が書いた但し書きの筆跡にどこか見覚えがありました。実は、そのレジの男性こそ『Tさん』こと保(たもつ)だったのです。
次に並ぶお客が控えていたこともあり、やよいは恥ずかしさのあまり慌ててその場を去ってしまいます。後日、やよいはお客様の声に「プリンがおいしいお店を見つけました 今度一緒に偵察に行きませんか?」と書き、保は「はい よろしくお願いします」と返答したところで幕を閉じます。
同作に対して「続きが気になる!」「2人が尊い…!」といった声が数多く寄せられました。その後の2人の展開に注目が集まる中、作者の二色杏さんに話を聞きました。
■SNS時代だからこそ紙でのやりとりは新鮮で温かみのあるもの
ー「お客様の声」を題材にしたきっかけはあったのでしょうか。
SNSなどでたまに見かける掲示板のやり取りがバズっている投稿や、近所のお店で見かける実際の掲示板に影響を受けています。
今のSNS時代において、紙を通しての匿名でのやり取りというものが、逆に新鮮で温かみがあり、すごく魅力的だと感じたことが大きなきっかけとなりました。顔が見えないからこそ生まれるユーモアや想像の余地が、恋物語の始まりにぴったりだと思ったんです。
ーやよいとTさんが出会う場面で物語は幕切れしますが、この先が気になります。
続きの構想といいますか、二人の関係はすぐには進展させたくないなと思っています(笑)。読者の方々や、物語の周りの人々をヤキモキさせるくらい、なかなか進展しない関係を楽しみたいですね。初めて二人きりで食べるプリンも、きっとお互い緊張でギクシャクしながら食べるんだろうな、と想像しています。そんな初々しい様子を描けたら面白いかもしれません。
ー読者へメッセージをお願いします。
この度は、漫画を読んでいただき、本当にありがとうございます!読んでくださったみなさんからの温かいお言葉が、次の作品への大きな力になっています。これからも、読んでくださった方々に「クスッと笑えて、ちょっぴりドキドキする」ような、楽しんでもらえる漫画を描きたいと思っています。これからもよろしくお願いいたします!
(海川 まこと/漫画収集家)

























