「荒らされるたびに思うんだけど、こんな環境で過ごしていて気持ち悪くならないんだろうか」
そんな一言とともに、伊豆を拠点に民泊を運営する鈴木健太さん(@kenken021503)がX(旧Twitter)に投稿した写真が話題になった。
そこに写っていたのは、食べかけの料理やペットボトルなどが散乱したチェックアウト後の部屋。驚く人がいる一方で、「文化の違いでは?」「清掃保証金を導入すべき」といった声も多く寄せられた。
投稿した鈴木さんは、熱海・伊豆・箱根で約50軒の一棟貸し民泊をプロデュース・運営している「伊豆民泊」代表。Airbnb Japanの公式サポーターとしても活動している。取材に応じた鈴木さんは「このようなケースは全体の数%」と話す。
■「オープン1カ月でこの状態に…」
「オープンして1カ月ほどの新しい施設だったので、とてもショックでした。全体の数%ほどしかないのですが、今回が一番酷かったと思います」
SNSでは「民泊って怖い」といった反応も見られたが、鈴木さんは「多くのゲストは本当に丁寧に部屋を使ってくれます」と語る。投稿の背景には、日々の運営の中で感じる“現場のリアル”を正しく伝えたいという思いがあった。
■「旅の目的地になる宿を作りたい」
鈴木さんは東京でITエンジニアとして働いたのち、地元・伊豆に戻って旅館業を経験。その後独立し、現在は地域の空き家を活用した宿泊施設を次々と手掛けている。
「民泊には、大人数で一つの空間を共有できるというホテルにはない魅力があります。泊まるための宿ではなく、“泊まること自体が旅の目的になる宿”を作りたいと思っています」
投稿内で触れられた“追加清掃費”も、利用規約や予約時の案内で事前に明記しているという。
「利用後の片付けをお願いしていますが、旅行者の方が気持ちよく過ごせるよう、スタッフも工夫を重ねています」と説明する。
■Airbnbでは「評価」でマナーを守る仕組みも
Airbnb(エアビーアンドビー)では、宿泊者とホストが互いに評価をつけ合う仕組みがある。
「評価の悪いゲストを受け入れない設定もできるため、こうした利用を事前に防げるケースもあります」と鈴木さん。一方で、素敵なゲストとの出会いも多いという。
「海外のゲストから“宿でプロポーズしたい”と相談を受けたことがありました。部屋を飾りつけてお手伝いしたところ、後日テーブルの上に“ありがとう”のメッセージとプロポーズ成功の写真が置いてあって、本当に嬉しかったです」
■文化や慣習の違いも背景に
「どこの国の方という話ではなく、文化の違いが原因になることもあります。靴を脱がずに室内に入る、ゴミの分別をしないなど、悪意というより“慣れ”の違いを感じます」
トラブルを防ぐには、「事前の同意制」や「デポジット(保証金)制度」の導入が効果的だと考えている。
「予約時に注意事項を確認してもらう仕組みが全体で整えば、ホストもゲストも安心できると思います」
■「民泊は、心を込めて作った宿」
ときに大変なこともあるが、それ以上にやりがいがあると鈴木さんは語る。
「民泊はホストが試行錯誤して、ゲストに喜んでもらえるように作られています。旅行でリフレッシュしに来てくださる方に、“この宿を選んでよかった”と思ってもらえるよう、心を込めて運営しています」
「お互いが気持ちよくチェックアウトを迎えられるように」
その言葉からは、民泊を「人の温もりがある旅のかたち」として育てたいという、ホストとしての誇りが感じられた。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

























