スマホを自在に操る高齢者が増えています。その一方で、ちょっとした操作や投稿が“事件”になることも。埼玉県のAさん(40代)の母親もそのひとり。インスタを楽しんでいた70代の母が、思わぬ騒動を招きました。
■デジタル女子を自負する70代が…
70代前半のAさんの母は、三姉妹の娘たちそれぞれからレクチャーを受け、スマートフォンを使いこなすようになった典型的な「学習型シニア」です。もはや電話やメールにとどまらず、孫のインスタ投稿に「いいね!」を欠かさず押し、同年代のインフルエンサー的存在のおしゃれなおばあさんのファッション投稿をフォローするほどの熱心さです。
想像以上に多くの高齢者が日常的にスマホを利用していて、お買い物のポイントカード、レストランの予約、SNSで地域のニュースを受信、と生活にはなくてはならない存在です。かつては「どうやって写真を送るの?」「文字入力ができない」と嘆いていた世代が、今やデジタルシニアとして進化しているのです。
そんな母に、Aさんはインスタで見つけた「18歳と81歳の違い」というユーモアあふれる投稿を共有しました。もともとはテレビ番組の大喜利から生まれたもので、年齢ギャップを軽妙に描いた人気ネタです。
母は「これ面白い!」と笑いながら、地域のシニアが集うヨガ教室のLINEのグループチャットにその投稿を転送しました。
ところが、ここから予想外の事態に。
ヨガ仲間の多くはインスタグラムを使っておらず、「リンクが開けない」「アプリをダウンロードしろと出る」「知らないアプリ」「これ詐欺じゃないの?」といったメッセージが次々に飛び交い、グループラインは通知が鳴りやまない大混乱に陥りました。
■「グループが乗っ取られた」疑惑まで
シニア世代にとって、見慣れないリンクやアプリの通知は未知の領域です。スマホに慣れていない人ほど「クリックひとつで個人情報が漏れるのでは」と不安になりがちです。
実際、60歳以上のサイバー犯罪被害は年々増加傾向にあり、「見知らぬリンクは開かない」が鉄則とされています。ヨガ仲間たちが過剰に反応したのも、ある意味では当然だったのかもしれません。
混乱は拡大し、「このグループ自体が詐欺に乗っ取られたのでは?」という憶測まで飛び交いました。通知は止まらず、ついにはヨガサークルの会長から母に直接「変なものを送らないで」と注意が入りました。
母は「そんなつもりじゃなかったのに…」と肩を落としたそうです。
◇ ◇
Aさんの母親の70代でインスタを使いこなし、流行の投稿を楽しむ姿は立派です。しかし、「相手の環境を想像する」という配慮が欠けていたのも事実。とくに81歳をネタにした投稿を、80代がいるグループに送った点には、無意識のリテラシー不足も見え隠れします。
今回の母の経験は、「デジタル社会での距離感」を考えさせられる出来事でした。使いこなすことも大切ですが、相手の立場に立つことこそが、真のリテラシーなのかもしれません。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
























