「実家の蔵から……気持ち悪いけど中に何か入っているようなので開けてみよう」
そんな一文とともに投稿された、不気味な箱の写真。継ぎ目がなく、まるで封印された呪物のようにも見えるその箱に、SNSでは、
「コトリバコだから開けちゃダメ」
「封印されてる呪物?」
「地獄の門を開けるやつ」
と、恐怖と笑いが入り混じったコメントが相次ぎました。
しかし後に明かされたその正体は…人気アニメ『呪術廻戦』に登場する呪物「獄門疆(ごくもんきょう)」を、100均の素材だけで作り上げた“自作作品”。
今回、その制作者・Amasakuさん(@amasaku777)に話を聞きました。
■制作のきっかけは「追視効果×獄門疆」
最初のインスピレーションは“追視効果”だったといいます。
「もともと追視効果を使って何か作りたいと思っていたんです。そんな時、呪術廻戦2期で五条先生が獄門疆に封印されるシーンを見て、“これだ!”と」
さらに、作品のリアリティを出すため、封印されていた“箱”まで丸ごと再現。しかし実際は制作しただけで満足してしまい、投稿するつもりはなかったそうです。
「映画館で3期の先行上映が話題になっていたので、“供養がてらネタとして投稿しようか”と思ったのがきっかけでした」
■材料はすべて100均縛り
驚きのクオリティとは裏腹に、材料はすべて100均で揃えたもの。
箱:
・カラーボード
・厚紙
・コピー用紙
・ボンド
獄門疆本体:
・石粉粘土
・レジン(目の部分)
・アクリル絵の具(着彩)
「誰でも真似して作れるように、あえて100均縛りにしました」
制作時間は、乾燥を除く“作業時間”だけでなんと 約24時間。仕事終わりに少しずつ作り、完成まで1カ月近くかかったそうです。
■“どこから見ても目が合う”追視効果
SNSで話題になった“どの角度から見ても目が合う現象”。その仕掛けは意外にもシンプルです。
「普通の眼球は凸面ですけど、あえて“凹面”で作ることで追視効果が生まれるんです。一度作ったときは効果が強すぎて、平面に近い凹面に作り直しました」
フィギュアやドールでも使われる技法だといいます。
■実家の蔵に置いた理由
投稿では“実家の蔵で見つけた呪物”のようにも読めたため、多くの人が本物だと勘違いしました。この理由について、Amasakuさんはこう話します。
「嘘を書くのは嫌なので、実際に実家に置いていたのは本当です。ただ“見つけた”と書くと完全に作り話になるので、“実家の蔵から…(引きあげてきた)”という表現にしました」
実家に置いていたものの、誰も気づかず放置されていたという。結果的に“蔵から発見された古い物”と思われてしまったが、それは意図したものではないと言います。
「勘違いさせてしまった方には申し訳ないですが、“本物?”と想像して楽しんでくれたのならうれしい気持ちもあります」
続きの投稿まで時間を空けたことで、期待がさらに膨らんだ面もあったかもしれません。
■印象に残ったコメントは「コトリバコ」
反響で最も多かったのは、“コトリバコ”との指摘でした。
「名前は知っていましたが詳しくは知らず、後から調べました。“箱状の呪物”という意味では通じるところがあるんでしょうね」
一方で、作品が綺麗すぎて“作り物感がある”という指摘も。
「本当はエイジング処理をしたかったんですが、100均縛りにしたので…。大正時代の新聞で包む、古い和紙で札を書くなど、構想だけはいろいろありました」
創作の熱意が伝わる裏話も飛び出しました。
■呪術廻戦の魅力
呪術廻戦のどこに惹かれるのか尋ねると、熱のこもった答えが返ってきました。
「主人公以外のキャラも個性的で魅力的。声優さんの表現力や、戦闘シーンの迫力も素晴らしいです。オープニングやエンディングのセンスも大好きです」
■次に作る呪物は…?
気になる“次回作”について聞いてみると…
「両面宿儺の指は作ろうかなと思っています。でも、今回のように“追視効果”や“発光”など、仕掛けが思いついたら本格的に取りかかりたいですね」
ただ作るだけでは終わらない、“アイデアありき”の作品づくりへのこだわりが感じられました。
■ ふざけながらも本気のクオリティ
本物の呪物のようでいて、実は100均の素材。ネタ投稿のようでいて、構造まで作り込んだ職人技。このギャップこそが、多くの人を魅了した理由なのかもしれません。
映画『呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』公開を控えたタイミングでの投稿という偶然も、話題を後押ししました。
Amasakuさんの獄門疆は、“遊び心×技術×作品愛”が詰まった一品。画面越しにでも目が合いそうなその存在感に、これからも多くのファンが魅了されそうです。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)
























