安定した仕事や生活を送っていても、「このままでいいのだろうか」とふと立ち止まり変化しようと考える人は少なくありません。現在Webメディアのオトナサローネにて連載されている漫画『人生大逆転・社会人から医学部に』(作者:たこやきまことさん)は、そんな迷いの中、思い切ってリスタートを決意した女性の奮闘と恋に揺れ動く女心を描いています。
主人公・汐見さつきは薬品系企業に勤める社会人です。安定的な日々を過ごす毎日ではあったものの、男女での労働量に差が少ないのに給料格差が大きいことに不満を抱いていました。さらに薬品系企業に勤めているにも関わらず、医学教育を受けている社員が少ないことに、この先のキャリアを含めて危機感を感じています。そんなある日、久しぶりに再会した友人が医学部を再受験すると知り、自分も今後のキャリア形成のためにも医学部への受験を決意するのです。
エリート新聞記者として働く恋人未満の友人・鈴木くんとのデートを励みに、さつきは仕事と勉強の両立に奮闘します。そんなある日、鈴木くんとのデートを楽しんでいると、鈴木くんが「カバン、持ってあげようか?」とさつきに声をかけます。
ですが、そのカバンにはぎっしりと教科書が詰まっており、鈴木くんはさつきがなぜ勉強しているのか、疑問を覚えます。というのも、実はさつきは鈴木くんに、大学医学部への受験を秘密にしていたからです。しかし鈴木くんにまっすぐな目で「なんでそんなに勉強をしているの?」と聞かれ、さつきは医学部を目指していることを打ち明けてしまいました。
さつきの告白に、鈴木くんは一瞬言葉を失いますが、「応援するよ、リケジョって好きだし」と優しく声をかけてくれたのです。その言葉にますますやる気を出すさつきは、胸を高鳴らせながら帰路につきます。一方、さつきと別れた後鈴木くんは「まぁ無理っしょ。どうせ長続きしねえよ」と吐き捨てるように言い放ちました。
そんな彼の本心を知らぬまま、さつきは応援してくれる彼を信じて、夢に向かって走り出すのでした。同作について作者のたこやきまことさんに話を聞きました。
■鈴木くんは王子のようで屈折しており、実は“よくいるタイプ”の男性
ーこの作品を描こうと思ったきっかけは。
安定した生活は穏やかで安心できる一方で、思考停止に陥る危うさもあると感じています。そのように、何もしないまま流されていく“罠”に抗うのが挑戦だと思っています。挑戦したいことがある人に「私もやってみよう!」と思ってもらいたいという想いから、この企画が生まれました。
ーなぜ、医学部受験というテーマを?
自分の経験を生かせる題材を選びました。実際に私が医学部学士編入に挑戦した際、意外と多くの人が関心を持っていると知ったことも理由です。
ー鈴木くんのキャラクターには、どんな意図や感情が込められていますか?
彼は、現代の女性を取り巻く“逆境”を象徴化した人物です。王子のようで屈折しており、実は“よくいるタイプ”の男性。私が20代の頃に気づけなかった価値観を、あえて強調して描いています。
連載の初期は「王子にするかクズにするか」迷いましたが、担当さんが「クズで」と即答してくれました。結果的に正解でした。描いていて一番楽しいキャラクターです。
ー 夢を追うさつきの姿を通して、読者にどんなメッセージやエールを届けたいですか?
さつきは何度も失敗して傷つきますが、その奮闘する姿を通して、挑戦したい方や今まさに困難と戦っている方に少しでも元気をお届けできたらうれしいです。そういう気持ちになっていただけるよう、今後も制作を頑張ってまいります!
(海川 まこと/漫画収集家)
























