創作活動において、さまざまな悩みごとはつきものです。漫画家・画家・教師の夏目にーにさんの作品『天才じゃない私たちが輝くために ~がんばる前に読みたい23の言葉~』からの抜粋エピソード『「ガス欠にならない方法」ほか3話まとめ』では、美術教師の視点から一歩前に踏み出すアドバイスが描かれています。
ある日、先生のもとに卒業生が訪れます。彼女は卒業後もイラストをコツコツ描き続けているものの、最近ガス欠になり「モチベを保ち続ける方法はありますか?」と先生に尋ねました。
先生は卒業生に、「『好き』なだけではいつか限界がくる」「まずは自分にとっての報酬を決め、ガス欠になる前に自分のモチベになりそうなことを決めておく」ようにアドバイスしました。しかし先生も簡単には行かないようで、いつも日々ガス欠と戦っていたのです。
別の日、美術室にて生徒が「友人に言われたことが気になって手が進まなくなった」と先生へ相談に来ました。先生も若いときは色んな人にアドバイスを貰っていましたが、「ほとんどの人の助言は私のためではなく『自分が喋りたい感想』を言ってるだけ」と気付いたのです。
長年教師を勤めていても、絵の助言はかなり難しいそうです。何気ない一言が悪い方向に刺さることもあり、先生は「まったく信頼関係のない人に軽い気持ちで助言できない」と日々試行錯誤しています。
その後、物語は先生が美術大学の生徒だったころに遡ります。生徒たちは表向きは絵を描く仲間でしたが、裏では嫉妬の感情でせめぎ合っていました。実績も自信もない主人公は、徐々に不安や嫉妬、自己否定によって押しつぶされそうになります。
しかし大学卒業後、比較対象が無くなったことで「自分にとって本当に価値のある創作」ができるようになりました。大学の経験を経て、主人公にとって「どこにいればよいパフォーマンスが生まれるか」を学んだのでした。
同作に対して、「学生じゃないけど共感できる!」「心に刺さる…」など共感の声があがっています。そこで、作者の夏目にーにさんに話を聞きました。
■「どうしたら漫画が拡散されていくか」がモチベーション
ー夏目さんご自身はガス欠を起こさないために、日ごろどのような目標を立てていますか。
目標を具体的にすることは意識しています。作中あったように報酬などをなるべく明確にイメージするとやる気が出てきます。私の場合「自分の作品を多くの人に届けていきたい」がモチベーションですので、どうしたらこのマンガが拡散されていくかは常に意識してますし、SNSもどう攻めていくか考えて運用しています。
あとは、少しでも進める習慣づけ。今日は1Pでもネームを進める、と決めて取り組むと自然にエンジンがかかる仕組みをつくるようにしています。
ー作中「何気ない一言が悪い方に刺さることもあるので、まったく信頼関係のない人に軽い気持ちでは助言できない」というセリフがあります。教師として日ごろどのようにして相手との関係性や受け止め方を見極めていますか。
見極め方で言うと、その生徒と関わる時間の量です。部活動で毎日関わる生徒と、授業で週に1回しか会わない生徒、そして大会で一度しか会わない生徒など、関係に濃淡がありますので、まず時間という点。また、会話の中の表情や姿勢をみて発言の強さを調節しています。そこは直感の部分が大きいです。
ー伝えたいことをお願いします。
主に創作する人に向けてマンガを描いていますが、他分野でも共感を得てもらうことも多いです。「読んだら少し前向きになるマンガ」をコンセプトに描き続けて、もうすぐ3年くらい書籍も出ていますが、無料で読めるスタイルは変えないつもりですので私のSNSに遊びに来てください。
(海川 まこと/漫画収集家)
























