子育てをしていると、ついつい自分のことは後回しにしてしまいがちになります。そうしているうちに自分が何をしたかったのかわからなくなることは多いでしょう。X(旧Twitter)で漫画を描いている串子さんが投稿した作品『私は私がわからない』では、そんな忙しさによって自分の楽しみを失いかけてしまう女性について描かれ、話題となっています。
物語は主人公が昼下がりに一人で過ごすところから始まります。子どもは学校、夫は会社へ行き、1人の自由な時間なのにテレビもSNSも全部つまらなく感じています。そこである日、同僚に「何しているときが一番楽しい?」と尋ねるも、相手も答えられず自分だけではないことに少し安心しながらも、「私の“好き”って何だろう」と考え始めます。
そこで思い切ってママ友や友人に話を聞き、いろんなことに挑戦してみることにしました。高級なお弁当は家計を気にして手が出なかったものの、代わりに少し高めのコーヒーを飲んでみると、「いつもより美味しい」と感じ、久しぶりに心が動く瞬間に出会うのでした。
その後も楽しそうなことや好きそうなことは全部やろうと決心します。高いフェイスマスクやコンビニスイーツ、セルフネイルや子どもの頃やりたかったガチャガチャまで。そうすることで徐々に心が動くようになり、それを実感して嬉しくなるのでした。
しかしある日主人公は、家族の要求に追われ、自分の楽しみを中断されてしまいます。苛立ちと虚しさが入り混じり、楽しみをすべて投げ出してしまいそうになった時、テレビで「今日死んでも後悔はないですか?」という言葉が胸に響くのでした。
そして、「自分を諦めたくない」と美容室へ向かい、髪を切ります。“自分を大切にする”とは、健康や努力ではなく、「自分で自分を喜ばせること」なのかもしれない。そう気づき、日常の中で小さな幸せを見つけながら、「私は私を諦めない」と心に誓うのでした。
同作ついて、作者の串子さんに詳しく話を聞きました。
■同じ気持ちを抱えた読者に届けたい「応援漫画」反響に涙
ーこの作品を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
母親になってから、諦めたことが沢山ありました。いつかまた…いつか……と思って手放したはずなのに時間が経つと何を諦めたかも忘れてしまっていて。でも何か満たされない。そんな自分に気付きました。
周りに聞いてみると意外と自分と同じように好きなことが分からなくなっているママさんが多かったので、このテーマで漫画を描きたいと思ったのがきっかけです。
ー漫画の構成などで特に気をつけた点などあれば教えていただきたいです!
自分のことを大切にしたい。自分の好きなことをもう一度見つけたい。と思える希望のある終わり方にしたかったです。この作品は自分を含め、同じ気持ちの女性に向けた応援漫画なので「漫画が胸に刺さりました」とリプライが来たときは嬉しくて涙が出ました。
ー 忙しい毎日の中で「心が動かなくなっている」と感じた時、まずどんな一歩を踏み出せば良いと思われますか?
「なんとなくしてる小さい我慢」に気付くのが、心が動かない私には1番効果的でした。例えば、スーパーでこのチョコ美味しそう と思っても「今日はいいかな」「また今度」と通り過ぎていましたが、今は立ち止まってこれを買うと自分は嬉しいかどうか考えるようになりました。
心が動かない時って、動かし方がわからなくなっているだけなんですよね。まずは小さいことから試して、「自分って、こういうのが好きだったんだ」と思い出せたら、それだけで前に進める気がします。
(海川 まこと/漫画収集家)
























