年収2000万円以上でも意外と余裕がない ※画像はイメージです(maru54/stock.adobe.com)
年収2000万円以上でも意外と余裕がない ※画像はイメージです(maru54/stock.adobe.com)

Bさん夫婦(ともに30代後半)は、いわゆる「パワーカップル」です。夫はIT企業勤務、妻は外資系企業に勤めで、2人とも年収1000万円以上です。世帯収入は2000万円を超えており、5年前に都内にマンションを購入しました。

現在は2人の子どもを私立小学校に通わせ、家事は外注サービスを利用しています。一見すると誰もが憧れる理想的な暮らしですが、実際には「教育費や住宅ローンが重く、思ったほど余裕がない」と感じる場面も少なくありません。

独身の友人にこの話をすると、「さすがに余裕がないは嘘でしょ」と話を聞いてくれませんでした。実際に世帯年収が2000万円を超えても、生活にゆとりは少ないのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞きました。

■「収入は多いが余裕はない」パワーカップルの家計のリアル

ーそもそも「パワーカップル」とはどのように定義されているのでしょうか。

Bさん夫婦のように「夫婦ともに年収1000万円以上」というケースもありますが、必ずしも全てがそう解釈されているわけではありません。いわゆるパワーカップルには統計上の厳密な定義はなく、メディアや金融機関では「夫婦それぞれが年収700~800万円以上、合計で1500万円を超える世帯」を指すことが多いです。

- この10年で増えているという報道がありましたが、その背景は何でしょうか。

最大の理由は「共働きが当たり前」になったことです。女性の高学歴化や管理職登用の広がりに加え、住宅価格の高騰で「夫1人の年収だけでは都心のマンションは買えない」という現実があります。FP相談でも「世帯年収2000万円でも、片働きになったら赤字」という声は珍しくありません。

- 税制や社会制度は、パワーカップルにどのような影響がありますか。

「高収入は恩恵が薄い」これが多くのパワーカップルの実感です。かつては扶養控除や児童手当の所得制限にかかりやすく、「制度の恩恵を受けにくい世帯」とされてきました。

近年は児童手当の所得制限が撤廃されるなど、緩和の動きも見られますが、対象外だった期間があることで、結果的に同年代の他世帯より受け取れる総額が少ないのです。住宅ローン控除についても、収入が一定額を超えると制限がかかる場合があるため、注意が必要です。

- 年収が高くても「余裕がない」と感じる家庭は多いのでしょうか。

非常に多い印象です。理由はシンプルで「収入に合わせて支出レベルも上がりやすい」からです。たとえば都内でマンションを購入した場合、いわゆる“億ション”クラスだったりすると、物件価格が高額なためローン返済が月20万~30万円台に達するケースもあります。

加えて私立小学校に通わせれば年間100万~200万円以上かかることもあり、さらに家事外注や習い事で固定費が膨らみ、「高収入のはずなのに思ったほど貯金が増えない」という声は少なくありません。

- FP相談に訪れるパワーカップルの悩みにはどのようなものがありますか。

代表的なのは「教育費が想像以上にかかる」「住宅ローン返済が重い」「老後資金が心配」です。特に「子ども2人を私立に通わせ、自宅ローンを抱え、家事は外注」というライフスタイルを選んだ場合、年収の大半を固定費が占めてしまうケースが多く見られます。

お金は工夫次第で取り戻せますが、子どもと過ごす時間は取り戻すことはできません。したがって、家計改善と同時にライフスタイル全体の優先順位を考えることが重要だといえるのではないでしょうか。

◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ)
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう 。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)