主婦のAさん(40代)は、家族でショッピングモールのビュッフェレストランに行き、食事をしました。その日は息子の誕生日祝いで、少し豪華な食べ放題を予約していたのです。店内に入ると、並ぶ料理を見て気分が上がり「せっかくだしいろいろ食べよう!」とパスタやから揚げ、サラダなどをお皿に盛りつけました。
しかし子どもはすぐにお腹いっぱいになり、Aさんや夫も思ったより食が進みません。その結果、テーブルには手つかずの料理がいくつも残ってしまいました。
その後、帰り際に店員が申し訳なさそうに近づき「大変恐れ入ります当店では食べ残しが多い場合に追加料金をお願いしております」と説明されました。Aさんは驚きつつ、追加料金を支払いました。
帰宅後もAさんは「お金を払っているのだから残すのは自由なのでは?」「でも食べ物を粗末にしたのは事実……」という思いから、もやもやは消えません。果たして食べ残しに罰金を定めることは法律的に有効なのでしょうか。弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に話を聞きました。
■「残したら罰金」はどんな条件であれば法律的に有効なのか
ー食べ放題などで「残したら罰金」と定めている店がありますが、どのような条件を満たせば法的に有効でしょうか?
「残したら罰金」というルールは、いくつかの条件を満たせば有効と認められます。まず大切なのは、そのルールが入店前や注文前に誰が見ても分かる形で表示されていることです。
たとえば、店頭やメニューに「食べ残し100gごと××円」と明記されていれば、お客さんはそれを了承したうえで食べ放題を利用したとみなされます。
次に、設定された金額が妥当であることが必要です。食材の原価や廃棄にかかる費用など、店側が実際に負担する損害と大きく差がない額なら認められやすいといえます。
しかし、3000円のコースなのに、少し残しただけで1万円請求されるような極端な金額は、消費者契約法や民法などにより無効となる可能性が高いです。
ー頼みすぎて食べ残した場合、法律的な責任が発生することはありますか? また、損害とされるのはどんなケースですか?
「つい頼みすぎて食べ残してしまった」というだけで、すぐに損害賠償が発生するのは通常ありません。食べ放題でお客さんが負っている義務は「料金を払うこと」と「店のルールを守ること」であり、「すべて食べ切ること」までは契約上の義務ではないからです。
お店側も、ある程度の食べ残しが出る前提で料金設定をしています。ただし、店が「食べ残し100gごと××円」と明確にルールを示している場合、それを無視して大量に残すと契約違反として追加料金を請求される可能性があります。
また、嫌がらせ目的で大量注文してほとんど食べないなど、明らかに通常の範囲を超える行為は、店に損害を与えたとして不法行為が問題になることもあります。とはいえ、こうしたトラブルが裁判にまで発展するケースはまれで、多くは店側の説明や追加料金、出入り禁止などで収まることが多いと考えられます。
ーお店が設定している「残したら罰金」の金額が極端に高い場合、そのルールは無効になることはありますか?
お店が「食べ残したら××円」と定めていても、その金額があまりに高すぎる場合は、法律上「無効」と判断される可能性があります。理由は、消費者契約法では「事業者に生じる平均的な損害」を超える違約金や損害額の設定は無効、と決められているためです。
食べ残しペナルティも、実質的には違約金にあたります。例えば、食材の原価や廃棄にかかる費用から考えて妥当な範囲なら認められますが、少し残しただけで数千~数万円を請求するような極端な設定は、裁判になれば否定されやすいといえます。
また、消費者にとって著しく不利で、常識から外れた条項は「信義則に反する」とされ、そもそも条項として成立しない扱いになることもあります。
つまり、食品ロス対策という目的でも、抑止のために過度な金額を設定すると、かえって法的に無効となる点に留意が必要です。
ー食べ放題やビュッフェで、店に許可なく料理を持ち帰った場合、どんな法律問題が生じるのでしょうか?
食べ放題のお店で、許可なく料理を持ち帰る行為は、原則として「窃盗」に当たる可能性があります。支払っている料金は、多くの場合「店内で一定時間、自由に飲食できる権利」に対するもので、料理そのものを所有できるわけではありません。
そのため、店が「持ち帰り禁止」と明確に示しているにもかかわらず、容器やバッグに入れて外へ持ち出すと、店の所有物を無断で持ち去ったと評価されます。
悪質さが強ければ、警察に通報され、捜査や逮捕につながる可能性も否定できません。また民事上も、持ち帰った料理の価格相当額や、防犯対応にかかった費用を請求されることがあります。
ただし、お店が「この容器の範囲で持ち帰り可」としている場合は、その部分については所有権が移るため、窃盗には当たりません。ルールが明示されているかどうかがポイントです。
◆弁護士法人ユア・エース 正木絢生(まさき・けんしょう)代表弁護士
護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや交通事故・相続・労働問題・詐欺事件・薬物事件など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、ユア・エース公式チャンネル「ちょっと気になる法律相談」では知っておきたい法律知識を配信中。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)























