熊本県菊池市で、住宅と犬舎が全焼し、プードルやハスキーなど約100匹の犬が命を落とす火災が発生した。
報道などによると、昨年(2025年)11月20日午後2時20分ごろ、「建物が燃えている」と通報があり、消防が出動。火は山林にも燃え移り、防災ヘリも要請される事態となった。鎮火までに約4時間を要し、繁殖業を営んでいた男性の住宅1棟と犬舎2棟が焼失。人にけがはなかったが、多くの犬たちは逃げ場を失い、炎の中で最期を迎えた。
この火災を受け、現地を訪れたのが、札幌で保護活動を行う犬猫保護団体Bellだ。SNSに投稿された現地の動画とともに、Bellは「放っておけなかった」と語る。
■慰霊碑除幕式のために熊本へ 「運命的な導き」を感じた現地入り
Bellが熊本を訪れたのは、偶然ではなかった。
11月22日、熊本で起きた別の多頭飼育崩壊事件で亡くなった猫たちの慰霊碑除幕式に参列するため、21日から23日まで熊本入りしていたという。
「20日の夜、フォロワーさんから“ベルさんが来る前日に、こんな火事がありました”と知らされました。タイミング的に、放っておけない運命的な導きを感じました」
地元の保護団体の協力を得て、火災現場に足を運んだ。
■現地で感じたのは「冷たさ」だった
実際に現場を訪れて、最も強く感じたことを問うと、返ってきた答えは短く、重い。
「冷たさです」
焼け落ちた建物。焦げた地面。そして、そこに残されていた光景が、Bellに深い絶望を与えたという。
■「なぜ拾い上げに来ない?」焼け跡に残されたもの
「このサイズ感で、どうやって100匹ものハスキーとトイプードルが飼育されていたのか、信じられませんでした」
現地には、焼け切れていない遺体や骨、肉片が、表層にそのまま残っていたという。
「なぜ拾い上げに来ないのか。もし自分の家族だったら、警察に止められても、骨の一本まで探し出すはずです」
Bellが感じたのは、火事そのもの以上に、「愛の不在」だった。
「きっと、この子たちの地獄は、火事なんかよりずっと前から始まっていた。そう感じて、絶望しました」
■「100匹」という数字が示す、構造的な問題
環境省の基準では、スタッフ1人が世話できる犬は15匹程度とされている。単純計算でも、100匹を適切に管理するには複数人の常時対応が必要だ。しかし、報道や公開情報を調べても、十分な人員体制があったかどうかは確認できていない。Bellは、「問題は個人ではなく、仕組みだ」と指摘する。
「ハスキーとトイプードルを100匹、きちんと飼育しようと思ったら、人手は何十人も必要です。個人が営めてしまうこうした“仕組み”そのものが問題だと感じました」
■防災対策以前の問題 「許可の取り消しも含め、もっと厳しく」
ブリーダーの防災対策について問うと、Bellはこう語る。
「今回の事件は、対策や改善という域を超えています。防災以前に、設備環境や衛生環境など、一定の基準をクリアできなければ、許可を取り消すくらいの締め付けが必要だと思います」
現行の動物愛護法や行政の監督体制についても、「課題しかないのでお伝えしきれない」と率直に明かした。
■「今すぐできる対策は、正直あまりない」
同様の悲劇を防ぐため、今すぐできる対策があるのかという問いに対しても、答えは厳しい。
「正直、今すぐできることは、あまりないと感じています」
それでも、Bellは希望を「人」に託す。
■「声を上げ、行動する人が増えれば、社会は変わる」
「この問題に限らず、犬猫保護や動物福祉の課題は、心を痛めた人たちが一丸となって声を上げ、行動すれば、ほとんどは解決できると思っています」
前に立って発信することが難しい人もいる。それでも、現場で活動する団体を応援することも、確かな社会貢献だとBellは強調する。
「犬猫保護は、誰か一人の力では成し得ません。それぞれの立場でできる関わり方を持ち寄ることで、初めて守れる命があります」
■亡くなった犬たちへ 「救えなくてごめん」
最後に、今回亡くなった犬たちへの思いを尋ねると、言葉は静かだった。
「救ってあげられなくてごめん。君たちを救えなかったけど、必ず、犬も猫も人も幸せに暮らせる時代を作るからね」
焼け跡に残った「冷たさ」は、社会に突きつけられた問いでもある。この出来事を「不幸な事故」で終わらせないために、何ができるのか…今、私たち一人ひとりに問われている。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)























