自分が本当は何が好きだったか、子どもの頃にどんな将来の夢を思い描いていたのか、あなたは覚えているでしょうか。そんな“本当の自分の気持ち”を思い出させてくれる友情を描いた漫画『Nolife』(作:笹川風磨さん)が、SNSで話題を集めています。
物語は、主人公・田城るなが「…私は、何になりたかったんだろう」と考えるところから始まります。幼稚園の頃から母親に言われるまま、るなは勉強に励んでいました。高校生になったるなは、学年1位の成績を誇る優等生になります。
そんなるなに声をかけてきたのが、クラスメイトの矢野涼風でした。一人称が「僕」の涼風は明るく社交的で、演劇部のエースとしても知られる目立つ存在です。
ある日、るなは廊下で涼風の生徒手帳を拾います。中から出てきたメモの文字は、ぐにゃぐにゃでほとんど読めません。「これじゃあ読めないじゃん」と呆れていると、舞台衣装のまま慌ててやってきた涼風に返したのでした。
しかしメモの文字がぐにゃぐにゃだったのには、理由があったのです。実は涼風はディスレクシア(識字障害)でした。読み書きが苦手な涼風は、授業の内容や手紙などはスマートフォンの音声読み上げ機能を使って理解しているのだといいます。そして、この秘密を誰にも言わないでほしいと涼風はるなに願うのでした。
その後、2人は先生の用事で買い出しへ行くことになります。そこでのやり取りから涼風とるなは少しずつ仲良くなります。しかし楽しい時間は長く続きません。家に帰ったるなは、85点だったテスト答案を母親に見つけられ、激しく責められます。
じつはるなは母親から優秀であることを強要され、厳しい管理の中生活をしていました。冷たくるなを問い詰める母親は、るなが涼風から貰ったお菓子も捨てられ、苦痛を感じながら勉強を続けます。
翌日、メンタル不調から顔に蕁麻疹が出た状態で登校したるなは、心配する涼風に対して思わず「涼風に私の気持ちなんか分かんないよ!文字読めないもんね!」と涼風が識字障害である秘密を皆の前で言ってしまうのでした。
その後、演劇部の発表で舞台に立った涼風は、「僕は字が読めません!だけどもなんとか生きてます!」と自ら明るく告白します。さらに「せっかくの人生だ、No enjoy No lifeでいこうじゃないか!」と観客に語りかけました。
舞台の後、るなは涼風に謝ると「ステージ上では文字読めないの忘れてたかったけどさーまぁしょうがない!」「隠し事するのしんどいもんね。るなちゃん悪くないよ」とるなを優しく許します。
後日、三者面談でるなの母親は「るなは医大に行きたいのよね?」と強要しようとします。しかしるなは、涼風の「せっかくの人生だ、No enjoy No lifeでいこうじゃないか!」という言葉を胸に、勇気を振り絞り「私はパティシエになりたいです!」と宣言するのでした。
そして「もう決めました。私は私の覚悟で、ちゃんと幸せになるから大丈夫」と語り、清々しい笑顔を見せます。
読者からは「じんわりと心に響きました」や「私の心に刺さる物語です」などの声があがっています。そんな同作について、作者の笹川風磨さんに話を聞きました。
■リアルで肩身が狭かったり苦しい思いをする人が理解される手助けになればなぁと
-同作を描こうと思ったきっかけや作品に込めた思いを。
作品のきっかけは教育虐待の実話を取材し書かれた書籍「母という呪縛 娘という牢獄」がテレビで紹介されていて読んだことですね。
リアルで肩身が狭かったり苦しい思いをする人が理解される手助けになればなぁと創作をしています。
-田城るな、矢野涼風というキャラクターはどのように生まれたのですか。
主人公が勉強を強制されるならば、相方は一般の学びから遠いキャラクターにしようと思い学習障害の設定になりました。
-特に読者に注目してほしいシーンやポイントを。
吹き出しの中の文字を教科書体にしたところ…ですかね!るなが普段感じている世界の見え方を表現したい一心で選びました。
-今後、新たに挑戦してみたいテーマは。
描きたい題材が見つかればその都度挑戦したいと思っています。とりあえず次に漠然と考えているのは宗教2世が主人公の作品です。
(海川 まこと/漫画収集家)
























