犬も入れる温泉に浸かるゆうたくん(写真はすべてご家族様提供)
犬も入れる温泉に浸かるゆうたくん(写真はすべてご家族様提供)

 いい湯だな~♪

 そんな歌が聞こえてきそうな写真が届きました。犬も入れる温泉に浸かっているのは、沖縄県名護市で保護された元野犬のゆうたくん。動物愛護管理センターに収容されたとき、体は油まみれでケガもしていたそうです。付いた仮名は「油太郎(ゆたろう)」。一度は殺処分対象になりましたが、寸前で沖縄の保護団体に引き取られ、預かりボランティアの家などを転々とした後、兵庫県西宮市へ。個人で犬の保護譲渡活動を行う日比飛鳥さん(活動名『狛犬の会』)の譲渡会でご縁がつながり、大阪に住む里中夫妻の家族となりました。

 奥様は不思議な体験をしたそうです。

「先代のボーダーコリー・ノアを亡くして少したった頃、夢を見たんです。私の膝にアゴを乗せたノアの頭をなでている夢。名前を呼ぶと振り返ってくれたのですが、その顔はノアではなく見たこともない犬でした。白っぽいレトリーバーのような…同じ夢を2度見たんですよね」

 しばらくして、夫妻はある譲渡会へ足を運びました。といっても犬を迎えるつもりはなく、そこに参加していた猫の保護活動家に会うため。「犬を見るのはつらい」と駐車場で待ち合わせていましたが、知人は一向に降りてきません。仕方なく2階の会場へ上がりエレベーターを降りると、視線の先にあったケージに夢に出てきたあの犬がいるではありませんか!奥様は目を疑いました。「夢で見た子に間違いない。でも、どうしていいかわからなくて見ないようにしていました」

 妻のただならぬ様子に気づいたご主人、事情を知らないまま、日比さんに「この子、会場内を歩かせてもいいですか」と尋ねました。子犬に比べ、成犬に興味を示してくれる来場者は少なく、しかも、それまでエレベーターが開くたびに吠えていた油太郎くんが、夫妻のときだけ吠えなかったのを見ていた日比さんは、もちろん快諾。奥様は夢で会った犬のリードを手に、戸惑いながら会場内を歩きました。そして帰り際、日比さんに連絡先交換を求められたことで運命の歯車が加速。そう仕向けたのは、きっとノアちゃんです。

 60代という年齢もあり、新たな犬を迎えるつもりはなかったご夫婦。奥様は悩みに悩み、「ハゲができた」と笑います。ただ、夢のこと、そして譲渡会の日、ケージの中で「ただただ会が終わるのを待っているようだった」油太郎くんの目が忘れられず、日比さんと話す中で不安を払しょく。日比さんサイドも万全の脱走対策などを条件に、譲渡会の約2か月後からトライアルを開始しました。新しい人や環境に慣れるのに時間の掛かる子も多い保護犬ですが、油太郎くんは2日目には奥様の“後追い”をするようになり、いたずらなどはゼロ。3週間後には正式譲渡が決まり、「ゆうた」という新しい名前をもらいました。

■先住犬が夢で引き合わせてくれた愛犬

 家族になって約5年。ゆうたくんは家でトイレをしないため、朝晩の散歩は必須です。「朝早く起きますし、仕事が終わればまっ直ぐ帰る。規則正しい生活になりました。夫婦の会話はほとんどゆうたのことで、旅行へ行く車の中もよく話しますし、ゆうたの存在は大きいですね」とご主人。その旅行先では冒頭の写真のように温泉に浸かったり、ジャグジーに入ったり。琵琶湖ではライフジャケットを着て泳いだこともあります。なぜか海はあまり好きではないようですが…。

「もともとシャンプーは嫌いじゃないけれど、ビビリだから泡がブクブクいっているジャグジーには入りたがらないだろうと思っていたんです。それが喜んで入って、翌朝夫が入っていると、『なんで自分だけ?』って顔をしていましたね(笑)」

 そんなエピソードを話す奥様をじっと見上げていたゆうたくんの顔は、ちょっと誇らし気に見えました。インタビューさせてもらったのは、毎月『狛犬の会』が参加する譲渡会の会場。「何のお手伝いもできないのですが、ゆうたにはお世話になった保護主さんやスタッフの方々を忘れてほしくないので、所用が重ならない限りお邪魔させてもらっています」と奥様。

 油まみれで保護され、殺処分寸前で命拾いしたのが嘘のように幸せいっぱいのゆうたくんを見て、「うちも保護犬を迎えよう」と思ってくれる来場者さんがきっといるはずです。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)