自宅の洗濯機が故障したため、Aさんはコインランドリーを使うことにしました。ある日の午前中、洗濯物を持って店を訪れると、洗濯機はすべて使用中。仕方なく午後に出直すことにしました。
ところが、午後に再び訪れても空きはありません。よく見ると、いくつかの洗濯機は午前中からずっと「終了」の表示のままになっており、利用者が洗濯物を取りに来ていない状態でした。
Aさんはその日のうちに洗濯を終わらせる必要があったため、悩んだ末、終了していた洗濯物を取り出して備え付けのカゴへ移し、自分の洗濯を始めようとしました。ところが、移した洗濯物の中には女性用の下着も含まれており、「誰かに見られたら怪しまれるのでは」と不安になります。
このように、コインランドリーで放置された洗濯物を、次に待っている利用客が取り出すことは法的に問題になるのでしょうか。Authense法律事務所の新町佳史さんに話を聞きました。
■「次の利用客が当然に取り出してよい」とまでは言いにくい
ーAさんのように、長時間放置されている洗濯物を取り出してカゴへ移動させることは、法的に問題はないのでしょうか。
直ちに違法になるとは限りませんが、「自由に移動させてよい」とも言い切れません。洗濯物は他人の所有物であり、取り違えや汚損、紛失が起きればトラブルになる可能性があります。
カゴへ移しただけで大きな法的問題にならないケースもありますが、まずは店舗のルールを確認し必要に応じて管理先へ連絡するのが望ましいです。
ー洗濯物の中に女性用下着などプライバシー性の高い衣類が含まれていた場合、トラブルになる可能性はあるのでしょうか。
下着などが含まれていると、トラブル化する可能性はあります。 ただ、空いた機械を使うために必要最小限の範囲で移動しただけなら、それだけで直ちに違法とはいいにくいです。一方で中身を必要以上に見たり、写真を撮ったり、SNSに投稿したりすると、プライバシー侵害として問題になる可能性があります。
ー放置されていた洗濯物を移動させた後、「衣類がなくなった」「汚れた」「傷ついた」などのトラブルが起きた場合、責任は誰に発生する可能性があるのでしょうか。
責任は、トラブルの原因が誰にあったかによって判断されます。たとえば移動させた利用客が衣類を汚したり紛失させてしまったりした場合は、その利用客が責任を負う可能性があります。反対に、店舗スタッフがルールに基づいて移動・保管した後の管理に問題があれば、店舗側の責任が問われることもあるでしょう。
また、長時間放置していた利用者側の落ち度が考慮される場合もあります。
ー店舗側が「終了後〇分で取り出します」などのルールを設け、洗濯物を移動させることは法的に可能なのでしょうか。
店舗側が「終了後〇分でスタッフが取り出します」といったルールを設けることは可能です。コインランドリーは多くの利用者が共有する施設であり、合理的なルールを事前に周知していれば、その内容は利用条件の一部になります。
ただし、利用者に分かりやすく掲示することや、取り出した洗濯物を適切に保管することが必要です。また、「店舗は一切責任を負わない」といった極端な免責条項は認められない可能性があります。
◆新町佳史(しんまち・よしふみ) 弁護士/Authense法律事務所
これまで企業法務にも携わりつつ、現在は相続、離婚、不倫慰謝料など幅広い分野にも対応。その累計相談件数は1万件を超える。依頼者1人ひとりと真摯に向き合い、言葉にならない思いや背景事情にも丁寧に耳を傾け、本音を引き出す対話を重視。スピーディーかつ友好的な解決へ導く粘り強い交渉力を強みとする。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)























