あの子は私にとって、なくてはならない相棒--。亡き愛犬シロくんを、そう表現するのは飼い主のミイカさん(@miikalove)だ。
真っ白でふわふわな被毛やまん丸な目、食パンのように耳先だけが茶色いところなど、シロくんには愛くるしい個性がたくさん。ミイカさんはすべてを愛しながら16年間を共に生き切った。
■生後半年を過ぎていた白柴に心惹かれて
2002年、家を建てたばかりだったミイカさん家族は在宅時、何者かにドアノブをガチャガチャと回されることがあり、恐怖を感じた。
防犯を強化しよう。そう考え、家族でホームセンターへ。店内に併設されていたショップで偶然、シロくんと目が合った。当時、生後半年を過ぎていたシロくんは安く販売されており、どこか寂しそうな表情。
ミイカさんはその姿が心に刺さり、「この子がいい」と力説。シロくんは家族の一員になった。
若い頃のシロくんは、とにかくやんちゃ。夏の暑い日には、散歩の途中で水が流れる側溝に飛び込み、盛大に水しぶきをあげ、水を噛むような仕草をして遊んだ。
「雨の日や雨の翌日の散歩は、特に大喜び。側溝が小さな川のように見えたのかもしれません。猛暑日には、庭でホースから直接水を浴び、全身びしょ濡れになって遊んでいました」
冬に雪が降ると、大喜びで庭を駆け、転げ回った後、寒さに気づき、ブルブルと体を震わせたそうだ。
「動くものを見ると飛びついていたので、台風の時の散歩で大人向けの雑誌が飛んできた時には咥えて離さず、意気揚々と持ち帰って(笑)そんなシロを抱えて一目散に帰ったのは、恥ずかしくも懐かしい思い出です」
■突然の脳梗塞「回復は望めない」からの奇跡のリハビリ
散歩だけでなく、シロくんはご飯の時間も大好きだった。食べる前のお座りは完璧。だが、お手は気持ちが前のめりになるのか、つい連打。お手を受けるミイカさんの手は、いつも泥だらけになった。
そんな笑顔溢れる日々が一変したのは、2017年8月2日のこと。シロくんは散歩中に突然、倒れてしまった。慌てて動物病院へ行くと、脳梗塞との診断が…。寝たきりになったため、1ヶ月ほど入院し、点滴治療を受けた。
獣医師からは、「手術はできない。回復も望めない」と告げられる。だが、ミイカさんは諦めなかった。少しでも歩けるように…との思いから、退院後はリハビリを開始する。
「毎日抱っこして芝生がある公園に連れて行き、後ろ足に歩行補助具を装着して歩く練習をしました。シロは外が大好きだから、風の匂いを嗅いでニコニコしていました」
自宅では、シロくんが過ごすケージに浴室マットの凹凸がある面を上にして敷いた。立つ時に爪や足の裏で踏ん張れるようにするためだ。
「倒れても痛くないように、周りはタオルや毛布でガード。寂しくないよう、近くにいることも心がけました」
■家族の顔を見ながら16年の犬生を生き切った
愛あるリハビリによって、シロくんは自力で立てるように。ミイカさんは、奇跡のV字復活が嬉しかった。
だが、生き物としての老いには抗えない。シニアのシロくんは徐々に体が弱っていき、認知症も発症。ミイカさんは何をしてあげればいいのか悩み、上司に相談したことがある。
その時、上司は「多分、シロは自分の症状や痛みについて、どうしたいとかどうしてほしいとか思ってない。ただ、その症状を受け入れて痛みと向き合っているだけ。死ぬことに対しても、次の部屋に行くためにドアを開けるみたいに思っている」と返してくれた。
「ドライな考え方のようにも聞こえるけれど、その時の私には本当に救われる言葉でした」
別れが訪れたのは、2018年9月17日のこと。その日、ミイカさんは朝から鳴いているシロくんを抱っこし、お喋り。
すると、シロくんはミイカさんの顔を見つめながら「きゅーん」と鳴いた後、口を何度かパクパク動かし、静かに息を引き取った。
「私を見たまま、目から光が消えていきました。頭や足がだらんとして力が抜け、体の重みを感じました」
シロくんは最期の瞬間まで大好きなミイカさんを見続け、愛を伝えてくれたのだ。
シロくんが旅立ってから月日が流れた今も、ミイカさんの心から「もっと、してあげられたことがあったのでは…」という自責が消えることはない。だが、同時に「大好きだよ。16年間ありがとう」という感謝もシロくんに伝え、一緒に生き切った16年の思い出を大切にしている。
見えないけれど、亡くなってからもそばにいてくれている気がする--。そう話すミイカさんは、これからも唯一無二の存在であるシロくんを愛しつづけていく。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)























