年収1000万円なのにぜんぜんお金に余裕がない! ※画像はイメージです(arancione/photoAC)
年収1000万円なのにぜんぜんお金に余裕がない! ※画像はイメージです(arancione/photoAC)

27歳のAさんは、結婚を機に仕事を辞め、Web制作の仕事を請け負う個人事業主の夫の収入で暮らし始めました。夫は交際中から「フリーで稼いでいるから心配いらないよ」と話しており、Aさんも結婚後の生活に大きな不安は感じていませんでした。

Aさんが「年収どのくらいあるの?」と聞いたとき、夫は「まあ1000万は超えてるかな」と答えており、結婚後の生活をなんとなく明るく想像していました。

ところが2人で暮らし始めた途端、Aさんは想像とまったく違った現実に直面します。毎月の生活費を夫の口座から出そうとすると、夫から「今月は引き出さないで」と言われ、外食も旅行もまったくできません。

不審に思ったAさんは夫を問いただすと、夫が言った「年収1000万円」は、仕事で受け取った報酬の合計額、つまり売り上げの総額だったことが分かりました。そこから保険や年金、経費などが引かれて残るのは、およそ400万円だったのです。

この事実を知ったAさんは「年収1000万円と聞いたとき、そのままの額を収入だと思ってしまった」と激しく後悔しました。

Aさんのように、結婚前にパートナーから聞いていた年収の中身を確認しなかったことでトラブルになるケースは決して珍しくありません。では、個人事業主のパートナーと結婚を考えるとき、収入面でどのような確認をしておけばいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの深田なみさんに話を聞きました。

■年収はすべて使えるとは限らない点に注意が必要

-個人事業主の年収は会社員と何が違いますか?結婚前に額面をそのまま信じてはいけない理由を教えてください。

会社員の年収は、会社から支払われる給与の総額です。そこから税金や社会保険料が引かれるものの、その計算ルールが一定であるため、手取り額がある程度イメージしやすいのが特徴です。

一方、個人事業主の「年収」という言葉の定義は曖昧で、人によっては仕事で受け取った報酬の合計、つまり売り上げ全体を指している場合があります。

注意してほしいのは、売り上げを全て自由に使えるわけではないことです。売り上げから仕事に必要な経費を差し引いたものが所得(事業所得)となり、さらに所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金保険料などを自分で納めて、ようやく手元に残る金額が決まります。

同じ年収1000万円でも、会社員と個人事業主では生活に使えるお金が大きく異なることがあるため、額面だけで判断するのは避けましょう。

-結婚前にパートナーの収入の実態を正しく把握するにはどうしたらいいのでしょうか?

いちばん確実なのは、確定申告書と青色申告決算書(または収支内訳書)を見せてもらうことです。個人事業主は毎年、前年の収入と経費をまとめて申告しており、これらの書類を確認することで、売り上げ・経費とその内訳・所得の状況がわかります。

できれば1年分だけでなく、2~3年分を確認できると収入の安定性も見えてきます。それに加え、国民健康保険料や国民年金の納付状況も把握しておくと、結婚後の家計のイメージもつきやすくなります。

-個人事業主と結婚する場合、会社員と比べて家計管理で特に注意すべき点はどこですか?

まず押さえておきたいのが、収入の波です。会社員と違い、個人事業主は月によって入ってくるお金の額が変わりやすく、仕事が少ない時期や体調を崩したときに収入が大きく落ちることがあります。

また、基本的には有給休暇や傷病手当金、失業給付もないため、多く稼げた月に将来に備えて生活防衛資金を貯蓄しておくこと、必要に応じて民間保険や小規模企業共済、iDeCoの活用も検討することが大切です。

税金や社会保険料は自分たちで管理して納める必要があるため、生活費・事業用資金・納税資金をあらかじめ分けておきましょう。

会社員の家庭とは家計の仕組みが異なる部分も多いですが、事前にふたりで話し合っておくと、結婚後のお金の不安は減らせるはずです。

◆深田なみ(ふかた・なみ) 2級FP技能士
住宅購入をきっかけに、住宅ローンや税金、保険などのお金の知識不足を痛感し、育休中にFP資格の取得を決意。育児と家事に奮闘しながら、約6か月でFP3級・2級に一発合格する。非金融業界出身だからこそ、専門用語をかみ砕き、初心者にもわかりやすく伝えることを大切にしている。現在は「お金×学び×キャリア再構築」をテーマに、自身の実践経験と気づきをもとに発信をおこなっている。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)