「うちの納屋で野良猫が子どもを産んどった」--。イチゴ作りの師匠から届いた一本の電話をきっかけに、2匹の子猫との新たな暮らしが始まりました。
この出来事をXに投稿したのは、イチゴ農園「まつもとファーム オールいちごハウス」(愛媛県松山市)を運営する「キジトラ・コタローのウキウキDAYS!!」さん(@DAYS31612434)。農園の看板猫としてSNSでも親しまれていた先代猫の「コタロー」くんを亡くし、深い悲しみのなかにいたころのことでした。
師匠が保護したのは、キジ白の「ムギ」くんと、キジトラの「コナツ」ちゃんを含む4匹の子猫。飼い主さんはそのうち2匹を迎え、現在、ともに生後10カ月となったムギくん、コナツちゃん、そして先住猫のチャミちゃんと農園で暮らしています。
■ペットロスを案じた師匠がつないだ「新たな出会い」
2025年9月13日、飼い主さんのもとに、イチゴ作りの師匠から電話がかかってきました。
「納屋で野良猫が4匹の子猫を産んだという知らせでした。しばらく様子を見ていたものの、親猫が見当たらず、このままでは子猫たちが飢えてしまうため、4匹を保護したそうです」
師匠の家には、すでに犬と猫がいたため、4匹全員を迎えるのは難しい状況でした。そこで、師匠から飼い主さんへ連絡があったといいます。
「『お前は猫の飼育経験者やし、何匹か面倒を見られんか。子猫を育てよると忙しくなって、いらんこと、つまりネガティブなことを考えられんようになる。何より子猫はかわいいけん、少しは前向きになれるやろ』と。私のことを気遣ってくださったのだと思います」
当時の飼い主さんは、コタローくんを亡くし、ペットロスに陥っていました。
「私に新しい命をつなぐ機会を与え、精神的に立ち直ってもらいたいという思いがあったのだろうと感じました」
師匠の思いを受け止め、飼い主さんは2匹を迎えることを決意。男の子のムギくんと女の子のコナツちゃんを引き取り、残る2匹は師匠が育てることになりました。
その決断の背景にあったのは、イチゴ農家を志したころから育まれてきた、深い信頼関係でした。
■偶然立ち寄ったハウスで始まった、師匠との交流
飼い主さんが師匠と知り合ったのは、約10年前。かねてからの夢だったイチゴ農家を目指し、愛媛県内の農園を訪ねて、栽培について学んでいたころでした。
「あるハウスで若い女性がイチゴの管理をしていたので、お話を聞きました。すると、『イチゴ栽培は父のほうが詳しいです。向こうにいるので、話をしてみてください』と言われ、そこで初めて師匠にお会いしました」
その日、師匠は自身の農園ではなく、知人の農家の圃場へ娘さんと手伝いに来ていました。農園は別の場所にあると聞いた飼い主さんは、日を改めて訪ねることになったそうです。
「実際に師匠の農園を訪れ、いろいろと話をするなかで、イチゴ栽培について懇切丁寧に教えていただきました」
話を重ねるうちに意気投合した飼い主さんは、さらに深く学ぶため、1週間ほど無償で働かせてもらえないかと申し出ました。師匠は快く受け入れ、翌日から農園を手伝うことになりました。
「このときに学んだことは、自分の農園をかまえる際におおいに役立ち、現在も生かされています。今も盛んに交流しており、困ったことがあれば気軽に聞ける関係を、非常にありがたく思っています」
農業関連の本で目にした「何でも聞ける師匠を持て」という言葉にも、自身の経験を通して深く納得したといいます。
「自分が最もつらかった時期に、親身になってさまざまなことを教えてくれた師匠に、私は全幅の信頼を置いています。師匠も普段から何かと気にかけてくださり、ペットロスに陥っていたときも、よく声をかけてくれました」
イチゴ農家を志して訪ねたハウスでの偶然の出会いは、時を経て、先代のコタローくん、先住猫のチャミちゃん、そしてムギくんとコナツちゃんとの縁にもつながりました。コタローくんとともに農園で過ごした日々や、そこで育まれた猫たちへの思いは、今も飼い主さんの中に息づいています。
「たまたま目に入ったハウスを訪ね、そこに偶然、手伝いに来ていた師匠と出会った--。どちらかが別の行動をしていたら、この出会いはなかったと思います。その偶然の重なりによって、今、ムギとコナツがここにいると思うと、感慨深いものがあります」
■対照的な2匹と始まった、にぎやかな農園生活
ムギくんとコナツちゃんを迎え、新しい命を守り育てる日々が始まった飼い主さん。その生活は、ペットロスのなかにいた心にも、少しずつ変化をもたらしました。
「先代猫を忘れることはありませんが、新たに迎えた2匹の世話をすることで、心の傷が少し癒えたように感じます。新しい命をしっかり育てなくてはという気持ちが芽生えたと同時に、チャミを含めた3匹との、にぎやかで楽しい農園生活が再び始まったとも感じています」
きょうだいでありながら、ムギくんとコナツちゃんの性格は対照的です。ムギくんはとても人懐っこく、来客があると、どこからともなく姿を現し、お客さんの足元にまとわりつくそうです。
「抱っこは苦手ですが、肉球やお腹を触っても怒りません。元気なやんちゃ坊主といった印象です」
一方、コナツちゃんは警戒心が強く、知らない人の前にはめったに姿を見せません。しかし、飼い主さんにだけは、まったく異なる表情を見せるといいます。
「飼い主には『超』が付くほどの甘えん坊で、自ら膝に飛び乗ってきます。抱っこも平気で、肉球やお腹も触らせてくれます。外では慎重で凛々しく、家では甘えん坊という印象です」
農園では、先住猫のチャミちゃんとムギくん、コナツちゃんが、それぞれの個性をのぞかせながら、今日もにぎやかな日々を過ごしています。そんな家族の姿を、コタローくんもきっとお空の上から見守っていてくれることでしょう。
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)
























