ホームに電車が入ってくる瞬間、子どもが手を振っても運転士は振り返せない--。元電車運転士だという投稿者がXで明かした理由と「お願い」に、注目が集まっています。
投稿したのは「鉄道会社は辞めるな君」(@tetsudo_yameru)さん。電車を運転していると親子連れによく手を振ってもらうものの、ホームに電車が入る「入線」時はブレーキ操作に集中するため、振り返せないことが多いそうです。
投稿では「停車中に手を振っていただければ全力で振り返します!運転士の活力になります」と、乗務員の心の声をつづっています。
このポストには、電車にまつわる思い出が数多く寄せられました。
「子どものころ手を振ったら汽笛?で返してくださった思い出があります」や、「息子と電車を見に行っていたので、何度もお手振りやフォーン(警笛)でお返事いただきました、とってもうれしかったです」など、温かなエピソードが並んでいます。「鉄道会社は辞めるな君」さんに、乗務員時代のことを聞きました。
■電車に手を振る親子 1日に数十回は見かけて…
「鉄道会社は辞めるな君」さんは、新卒で鉄道会社に入社してからの数年間、乗務員(車掌・運転士)を務めました。その後IT企業を経て、再び鉄道会社へ。現在は事務職としてDX(デジタル技術による業務改革)推進や経営企画を担うかたわら、ライターとして『鉄道会社のリアルを身近に』をモットーに発信しています。
運転士だったころ、沿線の公園や踏切、駅のホームなどで電車に手を振る親子を1日に数十回は見かけたそうです。
「特に天気のよい休日の昼間などは、何組もの親子が手を振ってくださり、とてもなじみのある心温まる光景でした」
手を振ってもらったときの心境を「ものすごくうれしかったです」と振り返ります。運転中は原則として振り返せないものの、心の中では「ありがとう!気をつけてね」と笑顔で見守っていたとのこと。
「電車運転士としての誇りや、お客様を安全に目的地へお送りしなければという責任感を改めて実感できる、とても励みになる瞬間でした」
入線時は、安全確認と集中力が最も求められる場面。前方とホーム上に全神経を注いでいたといいます。
「信号機の表示確認、ホーム上の安全(黄色い線の内側に人や障害物がないか)、停止位置目標(決められた停止位置)の確認、速度の調整などを同時に行っています。ブレーキもお客様にショックを与えないよう、段階を踏んで慎重に操作しています」
■ホームの端でいつも待っていた男の子
印象に残っているのは、ある駅のホームの端で、いつも同じ時間帯に手を振って待っていた小さな男の子と母親の姿でした。何度も見かけるうちに顔を覚え、「今日も元気に待っていてくれたな」と密かな励みになっていたそうです。
「安全に支障のない範囲で、ホーム停車時に少しだけ会釈を返したときの弾けるような笑顔は、今でも鮮明に覚えています」
街で電車に手を振る子どもを見かけるたび、乗務員時代の温かい気持ちを思い出すという「鉄道会社は辞めるな君」さん。Xでメッセージを送ったのは、「電車運転士側も、実はすごくパワーをもらっているんだよ」と伝えたかったからでした。
寄せられた多くの共感には、驚くと同時にうれしさも覚えたそうです。
コメントにあった「子どもが手を振っても運転士さんは忙しいから迷惑かなと思っていましたが、迷惑でなくて安心しました」という声には、「今回の発信がダイレクトに伝わってよかった」と感じたといいます。
「現役の電車運転士の方々からも共感の声が寄せられたことがとても印象的でした」
子どもと電車に手を振る何気ない瞬間は、運転席の中にも届いていたようです。
(まいどなニュース特約・山岡 もと子)
























