女性同士や男性同士の恋愛作品を多く読む人でも、当事者になるとまた別の感情が湧き上がるものかもしれません。椎名かじんさんの作品『もしも私が百合ならば』は、女性同士の恋愛(百合)の心境を描いた作品です。同作はX(旧Twitter)にて『軽い気持ちで同性愛アリと言ったら幼なじみ美少女に告白されちゃった話』として投稿されると、約2300のいいねが寄せられています。
女子高に通う主人公のとも子は、ある日友人たちとの何気ない会話のなかで「同性愛?あたしはアリだなー」と深く考えずに発言します。すると後日、幼馴染の親友・サチ子から突然告白されてしまったのです。
自分が同性愛の当事者になるとはまったく考えていなかったとも子。「女子同士なんて有り得ないでしょ!」「女子高の醍醐味だね☆」と様々な感情が入り乱れ、脳内妖精たちとともに激しい自問自答を繰り返します。とも子は悩みに悩んでぐったりしていたものの、サチ子のことが噂になったらまずいと思い、ほかの友人には相談できずにいました。
お昼休みに、とも子とサチ子、そして友人たちを交えてランチを食べはじめます。とも子は周囲にバレないようにと気を張っていましたが、サチ子はそっと自分の手をとも子に重ねてきます。とも子は慌てて、何事もなかったかのように取り繕いました。
その日の夜、とも子がアルバイトから帰る途中、サチ子が待ち伏せをしていました。サチ子は、とも子の手を取り一緒に帰りはじめます。道中、とも子は「女同士で付き合うってどーゆうことが分かってる?」とサチ子に尋ねました。サチ子の想いは真剣そのもので、とも子とは性的な関係も持ちたいとも思っているようです。
そのとき、サチ子は突然とも子にキスをします。おどろいたとも子は、真っ赤になりながら「もうちょっと待って、返事」といい残して自宅へと逃げ帰りました。その後とも子は、お風呂に浸かりながら、親友とファーストキスをしてしまった事実にふたたび頭を抱えます。
今まで通りの関係が一番だから断ろうと考えるとも子でしたが、脳内妖精たちは「いーから付き合っちゃえよ」「意識している気持ちを否定するの?」と、またしても脳内会議がはじまります。脳内妖精は「自分の気持ちに向き合わないと後悔するとき来るんじゃない?」と、とも子の本心に語りかけるのでした。
さまざまな思考が巡り、とも子はまったく眠れませんでした。それからも寝不足の日々が続き、日が経つごとに顔色が悪くなっていくとも子。しかしサチ子は、とも子に声をかけようとしません。実は2人の家は隣同士であるため、とも子がお風呂や自室で悩んで叫んでいた声は、すべてサチ子に筒抜けだったのです。
そのことをとも子に告げた直後、サチ子はキスしようとする素振りを見せますが、途中で止めて「ずっと友達でいよーね!」と涙をこぼしながら走り去っていきました。心の叫びが筒抜けだったことでサチ子を傷つけたのは自分のはずでしたが、今現在、とも子自身が傷ついていることに気付きます。とも子は、本当の返事をするために急いでサチ子を追いかけました。
サチ子が川辺でひとりで泣きじゃくっていると、とも子が追いつきます。「明日はフツーでいられるようにするから帰って」と告げるサチ子でしたが、とも子は「帰るかバカーーーーッ」といいながら後ろから抱きしめました。そして、とも子からサチ子にキスをして、自分の想いを告白するのでした。
想いが通じ合った後、とも子はいつ恋愛対象として自分を好きになったのか、サチ子に尋ねます。実は以前、とも子が「同性愛?あたしはアリだなー」と何気なく発言したのがきっかけであり、とも子自身がサチ子の背中を押してしまっていたことが判明したのでした。
読者からは「いい百合だった!」「素晴らしい…」などの声が寄せられています。そこで、作者の椎名かじんさんに話を聞きました。
■同性愛への理解が広まっても、当事者になると思っていない人もいるのではと思い…
-同作を描いたきっかけについて教えてください
年4回開催されている『コミティア』というオリジナルオンリーの同人誌即売会イベントに参加しており、毎回そちらに合わせて作品づくりをしています。
百合作品は近年だいぶ一般に受け入れられるようになってきており、同性愛についても理解が広がっていると思っていますが、それはそれとして人は当事者になるとは思っていないものですから、思ってもいなかった当事者になっていただきました。
-作中、お気に入りの場面や注目してほしいコマなどはありますか?
1ページ目から3ページまで、他人事が当事者になったと自覚するまでをテンション高くテンポよく描けたと思っています。脳内妖精も本来孤独に自問自答するシーンを楽しくしてくれて助かりました。
-2人の心境がギャグ調ながらも繊細に描かれていて、とても楽しい作品でした。椎名さんは、ほかにはどのような作品を描かれているのでしょうか
いまは、社会人と大学生の百合カップルの話を続き物で描いています。1話完結の話のつもりで、出逢いから付き合うまでの話を描いたのですが、キャラが良かったので続きを描いたら思いのほか長い話になっています。
毎回色々な場所にお出かけするのがメインですが、家族へカミングアウトする話があったりもしています。ハッピーエンド至上主義でして、その他過去作も含め、定期的にSNS上にUPしていますので、読んでもらえると嬉しいです。
(海川 まこと/漫画収集家)























