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(8)共同再建の道 「私」の利害を超えて…
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長田・御管地区から
 朝は神戸・ポートアイランドの仮設住宅へ、午後からはJR東加古川駅近くの仮設へ。神戸市長田区菅原通二丁目の自治会長・魚住哲也さん(53)はこの十四日、終日忙しかった。

 御菅地区で、初めての試みになる共同再建に向け、プランナーとともに住民と会った。案を示しての話し合いは、各世帯一時間余り。「感触は悪くない」。終わった時、ほっとした表情を浮かべた。

 二丁目と道を隔てた西側の三丁目では土地区画整理事業が計画される。二丁目も焼失家屋は多いが、区画整理の網はかぶっていない。建築の制限がない一方、行政の支援は乏しい。

 「このままでは取り残される」と魚住さんが、住民に呼びかけ共同再建の集会を開いたのは六月末だった。

 焼失した街区は、十四、五坪の狭い長屋が多く、幅約二メートルの路地があった。建築基準法では、家屋は四メートル以上の道路に接する必要がある。二メートルではそれぞれが一メートル下がらなければならない。建ぺい率の関係で敷地の六割しか使えない。

 「個別に建てても、ペンシル家屋になる。協力して共同化を」と集会以降、勉強会から案づくりを急いできた。

 だが、被災マンション同様、合意に時間がかかる。すでにプレハブ住宅を建てた人、共同住宅の生活に不安を感じる人、もちろん負担の問題が大きい。約七十世帯に呼びかけたが、今、可能性が残るのは十六、七世帯になった。

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 住民に示された案は、敷地をつなぎ合わせるため、凹凸のある約千平方メートルの土地に建つ。三、四階建て二棟で計十九戸。事業費約二億五千万円。設計や共用部分への行政補助、余剰の三戸程度の売却で負担は約一億円軽くできる。

 権利者の希望で多様なタイプを用意、1DKで約五百万円から3DKで千万・千二百万円となっていた。

 「近所とは一つの家族のように暮らしてきた。前の生活に戻りたい。二人なので1DKで十分。共同なら安くなるのも助かる」

 東加古川の仮設に住む師玉薫さん(69)、かず子さん(66)夫婦は積極的に考えている。しかし、時間がかかるのはしんどい。「光が見えたかと思うと壁にぶつかる。それぞれに事情があるのは分かるが…」

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 九月末、御蔵通・菅原通三、四丁目の住民を対象に共同再建の勉強会が開かれた。区画整理地域でも、共同化抜きに十分な数の住宅は確保できない。

 「震災後は、大けがをしたのと同じ状態だ。外科手術を選んだからには中途半端にできない。みんなが帰る道、再生する道を考えよう」

 「お年寄りが安心して住め、大きい家も小さい家もある、個人の思いを実現するような共同化を」

 建築家でもある小島孜・近畿大教授は熱心だった。八年前、大阪府門真市で古い木造アパート約百四十戸の共同建て替えをし、路地に向かい合う三階建て住宅をつくった経験がある。

 「中高層の街づくりが進むが、路地的な空間をつくるなど、下町のよさを生かす方法はある」

 小島教授は、共用部分の充実で長屋的、下町的な生活の集合住宅をつくることも可能とする。「私」の利害を超えて、「共」の意識を持つことが必要だと力を込めた。

1995/10/24
 

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